第2話 荒神組との初戦
「お前ら、ようやく9人揃ったんだな」
監督の黒田剛志は、部室の入り口で腕を組み、どっしりと立っていた。
神谷蓮はベンチに座ったまま、眉一つ動かさずに応じる。
「……まあ、揃っただけだ」
やる気ゼロの態度に、黒田は軽く眉をひそめる。
部室には、昨日までただの落ちこぼれだった部員たちが、ぎこちなくも揃っていた。
小林泰造は床に座り込んで新聞を読んでいる。
藤井隼人は煙草を吸いながらぼんやり窓の外を見ている。
鬼塚翔はバットを肩に担ぎ、どこか戦闘態勢のような雰囲気だ。
南条翼はじっと空を見上げ、風間涼はふくらはぎを伸ばしていた。
久我智也はノートを開き、データを整理する素振りを見せる。
大熊剛は無言で部室の隅でストレッチ。
「お前ら、本気で野球やる気あるのか?」
黒田は全員の顔を見渡す。
誰も答えない。沈黙。
「……まあいい。今日、練習試合だ」
一同は驚く。練習試合?
荒神高校の野球部は弱小すぎて、どの学校も相手になってくれない。
だが黒田は口元に薄い笑みを浮かべる。
「相手は……荒神組の組員で作ったチームだ」
ざわり、と部室がざわめく。
荒神組?
それは学園外の元帥が組長、監督が若頭を務める極道だ。もちろん公式戦ではないが、極道が野球などできるのだろうか。
「つまり、お前らは今日から本物の戦場に立つってことだ」
黒田は重々しく言った。
「覚悟はできてるか?」
神谷はまだやる気を出す気配はない。
だが、目の端に映る仲間たちの顔を見て、少しだけ気持ちが揺れた。
「……やるしかねぇか」
小さな声で呟いた神谷に、誰も気づかない。
こうして荒神高校野球部、弱小ながらも初の実戦に臨むこととなった。
部室のドアを開け、グラウンドに向かう一行。
荒神組との練習試合――それは彼らにとって、ただの練習ではなく、荒神高校の名をかけた最初の戦いの幕開けだった
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