汝の尊き言葉よ、誠実なれ

オークマン

第1章 「哀 -孤独-」

哀しい。


私は独り。

では、独りは哀しいの?


――ああ、哀しい。

独りは、やはり哀しい。


では、独りでなければ哀しくないの?


――ああ、哀しくない。

……嘘だ。あなたも哀しい。私も哀しい。






皆といても、私は独りだった。

皆と別れれば、なおさら独りは哀しいと感じるの。

だから別れは哀しい。私を置いて行かないで。

置いていかれるのが怖い。

お願い、行かないで。私はここにいる


ワタシは知っている。

独りを、出会いを、そして別れを。

全ての出会いの一瞬がどれも尊く、何もかもが儚く、そして独りは不可避の運命。


私は独りが嫌だ。

もっと沢山の「独りじゃない」を欲しい。

私はここにいる。だから、どうか一緒にいて。

でも、皆は行ってしまう。

私を置いて。

残される私は哀しい。

動けない私はただ泣くだけしか出来ない。


ワタシは覚悟を知っている。

ワタシは独り。

見送り、見送られる。出会いを、別れを、尊さを、儚さを、そして独りを。避けられぬ現実を突きつけられ、その繰り返しの中に立つ。

それでも、私は私――ただ一人のワタシ。


私は嫌だ。独りは嫌だ。

私はここに留まる。動きたくない。

私と一緒にいてくれる人たちが、きっと来る。

私を一人にしない誰かが。だから、どうか私の隣に居てよ。


――ワタシは行くよ。

独りがどんなに哀しくても、哀れでも、理不尽で不可避でも。

それでも――それでも、迷い続けても、躓いてもワタシは明日が欲しい。

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汝の尊き言葉よ、誠実なれ オークマン @Orc_chan

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