新編 卑弥呼と鈿女(ウズメ)（紀元247年の物語②） 🅽🅴🆆！

第10話 卑弥弓呼の陥落

卑弥弓呼の野望

　西暦247年3月、邪馬台国の空に日食の影が迫っていた。狗奴国の王族、卑弥弓呼は、邪馬台国の有力部族を糾合し、卑弥呼の日食後の混乱に乗じて王位を奪う計画を進めていた。25歳の若く野心的な戦士で、浅黒い肌に鉄の胸当てをまとい、髪に鷹の羽が揺れる姿は戦の神のようだった。だが、彼の野望は天鈿女命と天瑚女命の謀略に絡め取られていた。

　卑弥弓呼は吉野ヶ里の神殿に天瑚女命を招いた。彼女は珊瑚色の衣をまとい、鉄の髪飾りが松明に輝く姿で現れた。卑弥弓呼の瞳は野心に燃えていた。「天瑚女命、貴女の鬼道はとても狗奴国に響いている。どうか卑弥呼の老いた力を倒し、邪馬台国を俺の手にしたい」

　天瑚女命はそっと微笑み、近づいた。「卑弥弓呼よ、貴人の魂はまことに強い。されど卑弥呼の鬼道は深し。ゆえに我が姉、天鈿女命の力なくば、王位は夢に終わる」彼女の手が卑弥弓呼の肩に触れ、鬼道の呪詞が響いた。「神よ、どうかこの男の心を開きたまえ」

卑弥弓呼の瞳が揺れ、野心は天瑚女命の誘惑に溶けた。「貴女の力はとても信じられるよ。だが部族長たちの心が揺らぐ。どうか導いてくれ」

　天瑚女命は囁いた。「我が鬼道にて、彼らの心を縛らん。貴人は王位を手にし、ただ我が姉の命に従いたまえ」その声は柔らかく、珊瑚の髪飾りが松明に輝いた。

儀式の準備

　西暦247年3月23日、吉野ヶ里の神殿は卑弥呼を封じる儀式の準備で静かな緊張に包まれていた。弥生時代の祭祀文化を反映し、吉野ヶ里遺跡の祭祀遺構や『魏志倭人伝』の記述に基づく道具が神殿に息づいていた。天鈿女命は、第5話で籠絡した神々――天手力雄命、天児屋根大神、太玉命、布刀玉命、天石門別命、石凝姥命――の協力を得て、卑弥呼の鬼道を八咫鏡Ⅰに封じる舞台を整えた。

　天手力雄命は力の神として、屈強な体に汗を滴らせ、巨木を担いで神殿の門を強化した。鉄の鎚で巨大な石を打ち、卑弥呼の天岩戸への侵入を防ぐ石垣を築いた。鎚の音は神々の鼓動のようだった。「天鈿女命の命、まことに果たす」と彼は低く呟き、麻の縄と呪符の木札で結界を形成した。

　天児屋根大神は知恵の神として、麻の巻物に葦の筆で呪詞を記した。呪詞は太陽神の力を呼び、卑弥呼の魂を八咫鏡に吸い込むものだった。「太陽神よ、どうか卑弥呼の力を我が手に委ねたまえ」と彼の声は静かに響き、巫女軍団が銅鐸を鳴らして応えた。巻物には太陽の渦巻き文様と鬼道の呪文が交錯していた。

　太玉命は宝物の神として、銅鏡、瑠璃の玉、鉄の鈴を祭壇に配置した。福岡県平原遺跡の銅鏡や瑠璃の玉をモデルにした道具は、弥生時代の神聖さを象徴した。銅鏡の太陽神紋様、瑠璃の玉の輝き、鉄の鈴の音は神々の足音を呼び起こした。「天鈿女命の舞、ぜひこの宝物で神聖さを増す」と太玉命は宣言した。

　布刀玉命は剣と戦いの神として、巫女軍団を訓練した。鉄の短剣を手に、卑弥呼の支持者の反乱に備えた。巫女たちは麻の戦装束で夜の神殿を駆け、布刀玉命は叫んだ。「卑弥呼の民、必ず抵抗する。されど我が剣は天鈿女命に捧げられた」

　天石門別命は門の神として、麻の縄に瑠璃の玉と鉄の鈴を吊るし、結界を張った。「天鈿女命の命、門は我が守る」と呟き、卑弥呼の霊力を遮断した。

　石凝姥命は八咫鏡Ⅰを鍛えた。鍛冶場で銅と鉄を溶かし、太陽神の紋様と呪文を刻んだ。「この鏡、卑弥呼の鬼道を吸い込む。されど使う者は心を強く持つべし」と呟いた。八咫鏡Ⅰは松明の光に輝き、天鈿女命は微笑んだ。「石凝姥命よ、貴女の業はまことに見事なり。卑弥呼の魂、必ず我が手中に収める」

　神々の協力で、吉野ヶ里の神殿は鬼道の聖域と化した。天鈿女命は八咫鏡Ⅰを手に祭壇に立ち、呪詞を唱えた。「神々よ、どうか我が野望を支えたまえ。卑弥呼の魂、ぜひ我が手中に収める」神殿は鬼道の力で震え、儀式の夜が迫った。

部族長の裏切り

　天鈿女命は卑弥弓呼を孤立させる策を進めた。筑後氏、伊都氏、奴氏の部族長は表向き卑弥弓呼に忠誠を誓ったが、月花の鬼道に操られていた。月花は各部族長の寝所に忍び、鬼道の呪詞で心を縛った。「どうか卑弥弓呼を王位につけ、しかる後に弑してください。さすれば臺與が女王となり、貴人らの力はとても増します」

　筑後氏の長、麻彦は月花の誘惑に抗えず、寝所で彼女を抱いた。「貴女の鬼道はとても私の心を縛ります。卑弥弓呼を必ず討ちます」と誓った。伊都氏の長、鉄雄は月花の呪詞に魂を奪われ、「天鈿女命の命にどうか従います」と呟いた。奴氏の長、玉彦は月花の鈴の音に心を溶かし、「臺與こそまことに真の女王です」と宣言した。

　部族長たちの瞳に鬼道の幻影が宿り、卑弥弓呼は裏切りに気づかず日食を待った。鉄の胸当ては松明に輝いたが、裏切りの影が迫っていた。

日食の前夜

　西暦247年3月23日、吉野ヶ里の神殿は鬼道の力に満ちていた。巫女軍団は銅鐸を鳴らし、麻の縄で結界を張った。天鈿女命は八咫鏡Ⅰを手に祭壇に立ち、呪詞を唱えた。「太陽神よ、どうか卑弥呼の力を封じ、我が手に委ねたまえ」八咫鏡の表面が輝き、裏面の呪文が赤く光った。神殿の外では民衆が不安にざわめき、星空が不気味に瞬いていた。

　天瑚女命は卑弥弓呼を神殿の寝所に招き、最後の誘惑を仕掛けた。寝所は葦の幕で仕切られ、香木の煙が漂っていた。彼女は珊瑚色の衣を脱ぎ、薄い白布をまとい、卑弥弓呼の前に立った。「貴人の王位、我が姉がぜひ保証する。されどどうか心を我に捧げたまえ」彼女の声は呪詞のように響き、卑弥弓呼の瞳を捉えた。

　卑弥弓呼は白い肌に目を奪われ、鉄の胸当てを脱いだ。「天瑚女命、貴女の鬼道はとても俺の力を増すよ。部族長たちの裏切りなど恐れぬ」彼の手が彼女の腰に触れ、鬼道の力が心を支配した。天瑚女命はそっと微笑み、鈴を振った。「貴人の魂、まことに我が手中にあり。日食の後、王位は貴人のものなり」行為は鬼道の儀式のように厳かで、卑弥弓呼の野心は完全に天瑚女命の呪縛に落ちた。

登場人物

◯卑弥弓呼（ひみここ）

　年齢: 25歳

　出身: 狗奴国（宮崎県南部と仮定）

　邪馬台国の王位を狙う野心的な戦士。狗奴国の鉄の武器を背景に部族長を従わせる。

　浅黒い肌に鉄の胸当て、髪に鷹の羽が揺れる姿は戦の神のよう。

　天瑚女命の鬼道に操られ、部族長の裏切りに気づかず日食を待つ。

◯天瑚女命（あめのこのみこと）

　年齢: 17歳

　出身: 武雄の神域（佐賀県武雄市、武雄神社）

　神秘的で若々しい気品を持つ。鬼道の力で魂を支配する自信家。

　姉・天鈿女命に忠実だが、柔らかな誘惑で人を引きつける狡猾さ。

　神聖な役割に誇りを持ち、卑弥弓呼の魂を神に捧げる使命感。

　月光のような白い肌に、長い黒髪。瑠璃と珊瑚の髪飾りが輝く。

　珊瑚色の薄布をまとい、瞳は海の底のように深い。動きに17歳の弾み。

　銅鏡や鈴を持ち、巫女としての神聖さと官能的な魅力を併せ持つ。

　卑弥弓呼を誘惑し、鬼道の儀式で彼の野心を呪縛に落とす。

◯天鈿女命（あめのうずめのみこと）

　年齢: 21歳

　出身: 本州から流れて吉野ヶ里にたどり着いた巫女の長

　天瑚女命の姉。卑弥呼の巫女集団に関連し、鬼道で卑弥弓呼を孤立させる策を進める。

　深い海のような冷たい瞳と、珊瑚と瑠璃の髪飾りを持ち、勝利の確信に燃える。

　古風で威厳ある口調（「～たまえ」「～なり」）で、八咫鏡Ⅰを用いて卑弥呼の魂を封じる。

◯月花（つきはな）

　年齢: 20歳

　出身: 吉野ヶ里の巫女軍団（佐賀県吉野ヶ里町と仮定）

　天瑚女命から鬼道の秘技を学び、弓と短剣を操る女戦士兼巫女。

　鷹のように鋭い瞳と、風が稲田を揺らすような静かな動きが特徴。

　麻の戦装束に身を包み、腰に瑠璃の玉飾り、髪に鉄の髪留めが光る。

　敵の心を惑わす術に長け、鬼道の呪詞で部族長の心を縛る。

　引き締まった体は戦士のしなやかさと巫女の神聖さを併せ持ち、銅鏡や鈴を用いる。

◯天手力雄命（あめのたぢからおのみこと）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　力の神として、巨木と鉄の鎚で神殿の石垣を築き、卑弥呼の侵入を防ぐ。

　屈強な体に汗を滴らせ、麻の縄と呪符の木札で結界を形成する。

◯天児屋根大神（あめのこやねのおおかみ）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　知恵の神として、麻の巻物に葦の筆で卑弥呼の魂を封じる呪詞を記す。

　太陽神の渦巻き文様と鬼道の呪文を巻物に刻み、神殿に響く声で呪詞を唱える。

◯太玉命（ふとだまのみこと）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　宝物の神として、銅鏡、瑠璃の玉、鉄の鈴を祭壇に配置。

　平原遺跡の銅鏡や瑠璃の玉をモデルにした道具で、弥生時代の神聖さを象徴。

◯布刀玉命（ふとたまのみこと）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　剣と戦いの神として、巫女軍団を鉄の短剣で訓練し、卑弥呼の支持者の反乱に備える。

◯天石門別命（あめのいわとわけのみこと）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　門の神として、麻の縄に瑠璃の玉と鉄の鈴を吊るし、卑弥呼の霊力を遮断する結界を張る。

◯石凝姥命（いしこりどめのみこと）

　年齢: 不明

　出身: 神々の領域（吉野ヶ里の神殿に召喚）

　八咫鏡Ⅰを鍛え、銅と鉄に太陽神の紋様と呪文を刻む。

　鍛冶場の火で汗に濡れ、卑弥呼の鬼道を吸い込む鏡を完成させる。