📘第13話 あの日、ふたりで交わした約束
杉見未希
第13話 あの日、ふたりで交わした約束
日曜の午後、雨上がりの公園は静かだった。
濡れたアスファルトが陽に照らされて、どこか透明な雰囲気をまとっていた。
雨上がりの日曜の午後。
美羽がふと口にした未来へのことばに、
拓真は静かに「来よう」と約束を返してくれた。
はっきりした形じゃなくても、
“また一緒にいたい”と思える気持ちが、
もう約束だったのかもしれない。
ベンチに並んで座る美羽と拓真。
そっと風が吹き、木々の葉がやさしく揺れる。
「……なんだか、静かですね」
「うん。雨が洗い流してくれたみたい」
美羽は空を見上げながら、やわらかくつぶやいた。
その表情は、少しだけ笑っているようにも見える。
⸻
しばらく沈黙が続いたあと、美羽がふいに口を開いた。
「……ねえ、また、こうして一緒に来られたらいいなあ」
拓真は、まっすぐにその言葉を受け取るように頷いた。
「来ましょう。何度でも」
「約束……してくれる?」
「もちろん」
ふたりは見つめ合い、笑った。
どこかぎこちなくて、でもやさしい笑顔だった。
「未来のことなんて、正直まだわからないけど……」
「うん。でも……こういうのって、嬉しいなあ」
日々に追われたり、不安に押しつぶされそうになる中で、
「また会える」と思える誰かがいること。
その気持ちが、ふたりにとっての小さな希望だった。
📘第13話 あの日、ふたりで交わした約束 杉見未希 @simamiki
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