夏休みの宿題あるある

こる

夏休み最終日の悲劇

「まっずい……どうしよう」

お分かりの通り、俺はいま猛烈に焦っている。

なぜかって?

理由は簡単。夏休み最終日になっても、宿題に一切手をつけていなかったからだ。

ちなみに現在の時刻は午前八時。

ここから答えを写しながらやれば――おそらく正午には終わるはず。

そして予想通り、十二時前には宿題を終わらせることができた。

だが、油断してはいけない。むしろここからが本番だった。

「なんで……なんで読書感想文なんてあるんだよぉ!」

俺は本を読むのが早いほうだと思う。

けれど致命的に、感想が浮かばない。というか、まったく出てこない。

「面白かった」とか「ラストが良かった」なんて書いたところで、誰がそんな薄っぺらい感想を読みたいんだ。

それでも仕方ないので本を手に取り、読み始めた。読み終えるのに一時間半。時計の針はすでに十三時三十分を指していた。

「よし、このまま感想文も片づける!」――そう思ったのだが、三十分経っても、一時間経っても、何も書けない。

「……しっかし、本当に感想がないんだよなぁ」

机に突っ伏しながら唸ること二時間。

ようやく読書感想文を書き上げたとき、時計は十六時三十分を告げていた。

「ふぅ……これで全部終わった!」

安堵の息を吐き、さっそく宿題をカバンに詰め込もうとした――そのとき。

カバンの奥から、一枚の紙切れがひょっこり顔を出した。

見覚えのないその紙には、でかでかとこう書かれていた。

『自由研究』

「あ、終わった……」

そうして俺の夏休みは、静かに幕を下ろしたのだった。


                   完

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夏休みの宿題あるある こる @koru814

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