その男、神出鬼没

「水城さん、生徒会長と知り合いなの?」

「……生徒会長?」

私を襲った悲劇と直後、男は私を鼻で軽く笑い飛ばし教室から出て行った。そしてこれ見よがしに声を掛けてきた女子生徒に首を傾げる

「そう。さっきの、生徒会長の藤井瑞希ふじいみずき君。」

「……ふじい、みずき。」

「生徒会長、水城さんのこと知ってそうだったけど」

知っている。私はその生徒会長…というか藤井瑞希という男をよく知っている。不本意だ。本当に不本意だ。どうして。どうして。

「ちゅ、中学の時の同級生です…」

「そうなんだ!同級生だったんだ!すごい偶然だね!」

「そうですねぇ…」

どうして元カレと再会してしまったんだ…!!!!!偶然にしてもこんな再会の仕方がありますか!?なくない!?転校先に元カレがいましたとか、どんな展開なわけ!?…ていうか、普通元カノに声かけてくる?そういうものなの?

「それに名前も水城と瑞希…運命みたい」

「運命かどうかは分かりませんが、そんな運命は是非ともあってほしくないですね」

「まさに運命の再会的な!」

「………」

聞けよ、人の話を。

内心ツッコミながら、目を太陽の光の様にキラキラさせる女子生徒とは対照的に私の心はどんより雨マークである。ザーザー降りだよ、こちらは。運命なんてあってたまるもんか。運命なんてクソ喰らえだ。

「あ、私、相澤薫子あいざわかおるこ。かおるんって呼んでね!葵衣ちゃん!」

「え……仲良くなってくれるの…?」

「え……仲良くなってくれないの…?」

「いや、仲良くなりたいけど…」

だって、もう世界観が出来てて、そのルールが崩れるというか、なんというか。

「じゃあ仲良くなろう!皆ね、葵衣ちゃんがあまりにも綺麗な容姿をしてるから怖気付いて声掛けれないだけだから!へっへーん!私が1番最初にお友達だもんねー!皆、ざまーみろ!」

「…へっへーんって言いながら鼻の下に指を当てる人を初めて見たよ」

「私の仕草がおかしい事はどうだっていいの!ねえ葵衣ちゃん!」

「はいなんでしょうか、かおるん」

「中学生の生徒会長ってどんな感じだったの!?」

「……中学生の……」

同級生なら知ってるでしょう?と言わんばかりに瞳が期待で輝きを増している。これは言っていいのだろうか。現在のイメージと大分かけ離れているけれど、言っていいものなのだろうか

「中学生の頃の、生徒会長は、」

「うん!うんうん!」

「……も、」

「も……?」

言った事がバレたら目だけで殺される気がする。なんて思いながら唾を飲む。そして再度口を開こうとしたと同時に頭上のチャイムが鳴った

「あ、残念。じゃあまた後でね!葵衣ちゃん!」

「う、うん」

い、言えない。言えないと言うより、言いづらい。

現生徒会長であるアイツが、元ヤンだったとか。ヤンキー束ねて頭を張ってた厨二病だったとか、言えない、

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その花よ、淡く舞い散れ @remon__

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