第5話 夜、寝室にて
(……あの違和感は、気のせいだったのかしら?)
ルミナスは上質なベッドに寝転がり、天井をぼんやりと見つめていた。王宮の寝室は静かで、外からは水の流れるような穏やかな音が聞こえる。
(それにしても、ここは居心地がいいわね……)
この国・アクアリアは「水の国」とも呼ばれ、いたるところに水の精霊が息づいていると言われていた。川や湖の多い土地で、夜になると水面が月の光を優しく反射し、幻想的な輝きを放つのだ。
(わたしの水属性の適性と合っているからかしら?)
魔法には、基本6属性(水・草・炎・雷・氷・風)と、特殊2属性(聖・闇)がある。通常の人間は基本6属性のどれか一つを持つが、ルミナスは「水」の基本属性に加え、「聖」の特殊属性も持っていた。
(まあ、考えても仕方のないことよね……)
ふと、眠りに落ちそうになったとき──
ポトン
小さな水の音が聞こえた。
「……?」
ルミナスがまぶたを上げると、暗い室内に小さな青い光が浮かんでいた。それは水滴のような形で、まるで生き物のようにゆらゆらと揺れている。
(……水の精霊?)
彼女が手を伸ばすと、その光はひらりと指先に触れ、冷たいけれど心地よい感覚が伝わった。
「……よかった。新しい聖女様も、水を愛する方だった」
どこからか、かすかな声が聞こえたような気がした。
しかし、周りには誰もいない。ただ、夜の風がカーテンを優しく揺らし、窓の外からは水が流れる音が聞こえるだけだ。
ルミナスはもう一度ベッドに横になり、目を閉じた。
(ここなら……しばらく、穏やかに過ごせそう)
そう思った瞬間、無意識のうちに彼女の体を包むように、小さな光の水滴がいくつも集まってきた。まるで、精霊たちが彼女を祝福しているかのように──
「おやすみなさい、聖女様」
誰かの声を聞いたような、聞き間違いのような──
それでいてとても懐かしい優しい声が
静かな水の夜が、優しくルミナスを包み込んでいった。
夢を見ていた
幼いころの夢
「ねぇねぇルナ!」
「なあに?シルヴィ」
純粋だったころの夢
「あのねあのね――」
「わあ!」
平和だったころの夢
「約束だよ!」
「うん、約束!」
――なにも失っていなかったころの夢
暗転
全てが燃えている
目の前が真っ赤に染まる
熱い、燃えている
思い出が、平和が、思い出が
すべてすべてたった一人の魔族によって
幼い姿だがやっていることは恐ろしかった
すべてを燃やし尽くす
破壊しつくす
すべてを
それは【魔王】の復活の瞬間であった
魔王により住んでいた村を破壊され、すべてを失ってしまった
その時に聖女として目覚めた
ああ、もう少し早ければ救えたかもしれないのに
平和が続けばよかったのに
____
適正についての補足
基本適正は一人一つだけ。聖属性の適正は聖女のみ。闇属性は魔族の中でも上位のみ。
弱点
水 → 炎 → 草 → 雷 → 風 → 氷 → 水
聖⇄闇
追放された聖女は隣国王子に溺愛される 白金/元素番号78 @platinum78
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