かみなりさまのかくれんぼ

霜月あかり

かみなりさまのかくれんぼ

ある夏の日の午後。

じりじり太陽が照りつける空に、ぽつんと黒い雲があらわれました。


その中にかくれていたのは――

ちょっといたずら好きな、かみなりさまのポコ。


「ふふふ。今日はかくれんぼしながら、みんなをびっくりさせちゃおうっと」


ポコは雲のすきまから、そーっと町をのぞきます。


公園では、子どもたちが水鉄砲でキャッキャ。

犬は木かげでぐーぐーお昼寝。

洗濯物は、風にゆれてひらひら踊っています。


「まだ、だれもぼくに気づいてないな……」

ポコはにやにやしながら、息をひそめました。


――そのとき。


ひとりの男の子が空を見上げて言いました。

「あの雲、チョコアイスみたい!」


「えっ!? ぼく、そんなにおいしそう!?」

ポコはあわてて、ぴかっと小さな光を出してしまいました。


「わー! ひかった! かみなりさまだ!」

女の子がさけぶと、みんなが空を見上げます。


「み、見つかっちゃったぁ!」

ポコは大あわて。

「ええい、こうなったら――ドドーン!」


ドドーン! と大きな音がひびき、

ばらばらばら〜っと雨がふってきました。


でも、子どもたちはこわがるどころか大はしゃぎ。


「やったー! 雨あそびだ!」

水鉄砲をほうり出して、ぴょんぴょんバシャバシャ。


顔にあたるしずくはつめたくて気持ちいい。

水たまりにうつる空も、ぴかぴかひかっています。


「……あれれ? びっくりさせるつもりが、もっと楽しくしちゃったの?」

ポコは、なんだか照れくさくなりました。


「ま、いっか。じゃあ、もうひとドーン!」

ドドーン!


子どもたちの笑い声といっしょに、

ポコの雷は夏空いっぱいにひびきました。


その日から、夏の急な雨は――

「ポコのかくれんぼ」とよばれるようになったのです。

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かみなりさまのかくれんぼ 霜月あかり @shimozuki_akari1121

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