路上占い、あれこれ⑳【占い師は理性でも話す】

崔 梨遙(再)

1108文字です。

 占いのお客様、A子さん70代。お嬢様のB子さん50代。B子さんの婿殿はC男さん40代。C男さんは、ご近所の40代の主婦のD子さんと不倫中。


 不倫はとっくにバレている。ドライブレコーダーにはホテルに入って行く動画が撮れていて、C男の財布にはホテルのレシートが何枚も入っていた。A子さんのお孫さんはE子ちゃん高校生。E子ちゃんも父親のC男の浮気を知っている。


 それでも、C男はD子に会いに行くのだ。そして、D子は旦那に離婚届けを出していて旦那がハンコを押さないという状況。


 B子さんからすれば、他の女を抱いて帰ってくるC男が嫌でたまらない。『汚らわしい』と思っている。もう、生理的にC男を受け付けないのだ。


 じゃあ、さっさと離婚すればいいと思うかもしれないが、経済的な事情がある。離婚したら、慰謝料や養育費をもらっても今よりも貧しくなる。E子ちゃんを4年制の大学に行かせたい。だが、B子さんは、もうC男と暮らすのに嫌悪感。


 そこで、僕が占った。


 結論から言うと、優柔不断なC男は動かない(動けない)。動かすには、B子さんだけでは力不足。A子さんとC男の両親が介入しないと話は進まない。ただ、全員集合したら話は離婚に向く。現状を(経済面)維持したいなら割り切ってE子ちゃんが大学を卒業するまで、下手すれば7年間も辛抱しないといけなくなる。という結果だった。


『難しいなぁ』


 A子さんは言った。


『いやいや、今から言うことは占いではありませんが、この件は単なる2択ですよ。お金を重要視してC男はATMだと思って割り切って暮らすか? 心の平穏を重要視して離婚してスッキリするか? それだけの話です』

『それはそうやけど、そうやって割り切るのは難しいんやで』

『いやいや、もうB子さんはC男さんを汚らわしいと思うところまで追い込まれてるんですよ、もう仲の良い家族には戻れません。信用や信頼が失われていますから。そこまで事態は進んでるんです。お金をとるか? 安らぎをとるか? ですよね?』

『そうやねんけど・・・お金が無かったら孫を大学に行かせられなくなるかもしれないし・・・それでもC男のことは嫌になってるし・・・人間って、そんなに簡単でも単純でもないやんか』

『そもそも、4年制の大学に行かなくてもいいじゃないですか、行くとしても奨学金があるし』

『うーん、それでも、大学には奨学金をもらわずに行かせてあげたいねん』

『それじゃあ、堂々巡りですよ。いつまで経っても話が進まないじゃないですか。選ばないといけない時ってあるんですよ。B子さんは、今が選択を突きつけられている時です。逃げられないんです。選ばないと』



 占い師は、占いの結果以外、理性的な話をすることもある。







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路上占い、あれこれ⑳【占い師は理性でも話す】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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