白い髪と白い肌の美少女『雪』は家出した先で暴漢に襲われたところを、黒髪に黒の衣装の傾奇者『乱』に救われます。
行くところがない『雪』に、『乱』は嫁になれと告げます。
二十歳にもなって嫁がいなくては道場の跡取りとして示しがつかないため、とりあえず都合のいい相手を探していたのだそうです。
『乱』は衣食住を提供し、『雪』は嫁という存在を提供する。それだけの、あくまで『契約結婚』でしかない関係を求められるのです。
悪い条件ではないのですが『雪』には、素直に頷けない事情があったのです。
なぜなら『雪』は、男の子だったからです!
先ほど美少女と申し上げましたが、すまん、ありゃ嘘だった。謝罪して訂正いたします。
男の子だったからです!(大事なことなので2回言いました)
勘違いされたまま結婚生活が始まるわけですが……『乱』が嫁に深い関係を求めないのにも、事情がありました。
なぜなら『乱』は、女の子だったからです!
女の子だったからです!(大事なことなので以下略)
互いに自分の性別を隠したままの結婚生活。
互いに同性だと思っている相手に惹かれていく、禁断の恋、そして煩悶……? いいえ、そんなにシリアスではありません。面白おかしいモブたちの活躍も相まって、コミカルでとても楽しい物語に仕上がっております。
これまで得られなかったモノを相手から受け取って、絆が深まっていくふたり。
きっとあなたも、「お前ら早く事情明かして本当に結婚しちゃえよ」と思うことでしょう。
そんな甘々ですれ違いな時代劇ラブコメ。ぜひ、お楽しみください!
このテンションが楽し過ぎて、気がつけば一気読みしてしまいました。
主人公の「雪」は白い髪に赤い瞳などの容姿が災いし、実家では迫害される憂き目に遭っていた。そして夜道で暴漢に襲われそうになっていたところを、近くの剣術道場の跡取りである悪童「乱」によって救われる。
乱は帰るところがないと言う雪に対して、「契約結婚」を持ちかける。そして「嫁」として自分の傍にいるようにと命じる。
というように、クールな雰囲気の乱が雪を守ってあげることから物語は始まります。
……なのですが、実は雪と乱にはそれぞれ「ある秘密」が存在していて。
その上で、普段はぶっきらぼうに振る舞う乱は、内心ではひそかに雪のいじらしさ、けなげさにもう悶絶しまくる状態に。
「可愛さ顕現大神(かわいさけんげんおおみかみ)」という謎の神すらも創造しうるほど、心を奪われてしまっている乱。契約結婚と言いつつひたすら雪を溺愛し、ちょっとでもからかう者がいたらきつめのお仕置きをしてしまいます。
乱や雪のそれぞれの心の動きが面白く、更にサイドを固めるキャラクターたちが端役にいたるまでとても個性的で読者をひたすら楽しませてくれます。
色々と問題を抱えた二人。でも、問題があるからこそ上手くいくかも、という気もする二人。乱と雪の恋の行方がどうなっていくのか、是非とも見届けてみてください。
サムライは好きですか?
唐突な問いですが、本作は架空の時代小説です。本来、時代小説というものは現代程に異世界ファンタジーが生まれていない時代に、「歴史オタ向けファンタジー」という側面を持ち合わせておりました。ただし、その時代考証は綿密に行われ、細部に渡り心血が注がれ、様々な文献を調べ、そのうえで「オリジナルな解釈を加える」、そういう世界です。
皆様もご存知な方が多い「宮本武蔵」を扱ったマンガ「バガボンド」。原作は吉川英治先生の小説『宮本武蔵』、僕は中学の時に家に全集があったので読みました。これは史実というよりは、思いっきりオリジナルな世界です。だけど、多くの人々に愛されました。それは何故でしょう? 答えは、
生きている、からです。
そこに存在するキャラが皆、生き生きと人生を歩み、悩み、あがきもがき、そしてそれぞれの境地を探す。非常に示唆に富んだ筆致は流石の仕上がりです。
さて、本作です。
群雄割拠の戦国は遠く過ぎ、時は今や泰平の世。雪と乱という美しくも秘密を抱えた二人の「契約結婚」の物語。さらに素敵なファンタジー要素有りです。
こちらの物語、最大の魅力は何と言っても、筆者である初美陽一先生の書かれるキャラです。
生きてます、そしてその全てが面白いです!!
これは主人公達に限った話でなく、ちょい役のモブキャラでさえスパイシーな仕上がりで、むしろ気に入ってしまって、思わず推したくなるほどの破壊力があります。
これこそラノベ、これこそ「初美ワールド」なのです。
お勧め致します。
名作と呼ばれる作品は「キャラが生きています」。こちらの物語はその生きたキャラである二人が、どんな出会いをし、どんな時間を過ごし、どんなやり取りを経て、どんな絆を育てていくのか、是非皆様にも知って頂きたいです。さらに、そこにスパイシーな設定が絡んでおり、それゆえにとても優しくて爽やかな物語へと至っております。ラストが素敵です。
皆様、是非、宜しくお願い致します( ;∀;)
不遇な環境で育ったヒロインと、悪童で知られる道場主の恋物語。
……あはは、この初美先生がンなフツーの物語を書くはずもなく(知ったかぶり)。
この二人には秘密があります。本作の核心となすその秘密こそが二人の恋の最大の障害であり、かつお似合いカップルぶりを極限まで高めています。
「コイツ何言ってるんだ」とツッコミたくなった貴方にこそ、是非本作を拝読して頂きたいものです。
例によって脇を固めるキャラクター達も非常に個性的で、愉快の文字を頭に備えたスチャラカキャラが二人をハッピーな混沌空間へと招き入れてくれるでしょう。
時代劇という舞台が新鮮な初美先生の新作、あっさり読めてキレイに完結し、さらに歴史的考証やその時代の言葉なんかもふんだんに使われていて、いかにも「その時代」の空気感を味あわせてくれます。
肩肘張らずにさらっとした面白さを味わいたい方、是非どうぞ。