エピソード of 虎二

怪談話の会に参加するより少し前のお話。

俺の名前は野口 虎二 。二人兄弟の末っ子。ちなみに兄ちゃんは虎壱(とらいち)という。

俺が高校一年のとき、父ちゃんは大工の仕事中に事故で亡くなった。父ちゃんが死んで数日後の朝、母さんがいつものように「朝ごはんできたよー、早く起きて」と声をかけてきた。リビングに行くと、そこには父ちゃんの分の朝食まで用意されていた。最初は「まだ忘れられないんだろう」と思って、それほど気にはしなかった。けれど、ある日も同じように父ちゃんを起こしに行き、ご飯と洋服まで用意している母さんの姿を見て、さすがに気味が悪くなった。俺は兄ちゃんに相談し、病院で診てもらうことにした。診断結果は、父ちゃんの死のショックで、「生きている」と思い込んでしまっている、というものだった。医者は、「治すには、亡くなったことをしっかり伝えるしかない」と言った。家に帰り、改めて母さんに伝えた。すると、母さんはお通夜以来ずっとこらえていた涙を流した。けれど、次の日もまた、父ちゃんの分の朝食を用意していた。呆れた俺は、友達や先生にも相談したが、誰も信じてくれなかった。その中で唯一信じてくれたのは、幼稚園からの幼なじみで、別のクラスの健だけだった。日が暮れるまで、健は俺の愚痴や不安を黙って聞き、平気なフリをしていた俺を静かな優しさで包んでくれた。そして高校三年になり、何年かぶりに健と同じクラスになった。だが、健は春休み明けから数週間、学校を休んでいた。俺は理由を聞けなかった。聞いてはいけない気がしたからだ。夏休み前、健が突然俺の家を訪ねてきて、「頼みたいことがある」と言った。話を聞くと、それはとても面白そうな内容で、なにより幼なじみの頼みを断るはずがない。こうして俺は非日常を味わいに、夜の学校へ忍び込んだ。

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終わらないあの日の真相 ポセイドン @poseidon2525

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