第14話 屋上の再会
夜のリビング
テーブルの上には読みかけの参考書、BGM代わりに流しているのは情報番組。
ふと、画面に鮮やかなステージの映像が映った。
センターで踊る一人の女性。
高く結い上げた黒髪、しなやかな動き、作り物みたいに整った笑顔。
──宮園沙耶。
佐伯の幼なじみで、二人いる幼なじみキャラのうちのひとり。
宮園は小学生の頃まで佐伯とべったり一緒だったらしい。
俺が知っているのは、主にゲームの記憶からだ。
小学高学年の頃、宮園は佐伯のことを好きになった。
でもその気持ちは伝えられないまま、彼女は芸能の道へ。
高校で佐伯と再会した時には、すでにアイドルとして華々しくデビューしていた
ゲーム本編でも、現実でも。
もしも佐伯が宮園ルートを選んだ場合、彼女はアイドルを辞め、普通の女の子として佐伯の隣にいる未来が描かれていた。
だがこの世界では、そのルートは選ばれなかった。
結果、彼女は今もアイドルとして第一線に立ち続けている。
眩しいスポットライトの中、完璧な笑顔でファンの歓声を受けているけれど
……その笑顔の奥に、どこか影のようなものを感じるのは
気のせいだろうか。
◇
翌日。
バイトの休憩時間にビルの裏口に出た。
ここは関係者以外ほとんど来ない、古いオフィスビルだ。
俺は、そのオフィスビルの一階のコンビニで働いている。
ふと見上げると、屋上のフェンス越しに人影があった。
風に揺れるコート。
その人物は、フェンスの内側ではなく──外側に立っていた。
胸が冷たくなる。
駆け足でビル内へ入り、非常階段を一気に駆け上がった。
◇
屋上に出た瞬間、冷たい風が頬を打った。
フェンスの外、かすかに震える背中。
街の灯りが、彼女の輪郭を青白く照らしている。
「──やめろ!」
振り返った顔は、驚きで見開かれていた。
その一瞬の隙に、俺はフェンスを開けて腕を掴む。
「離して……っ」
「離すかよ」
思い切り引き寄せた拍子に、彼女は俺の胸にぶつかった。
細い肩越しに、冷えた髪が頬に触れる。
その感触で、ようやく顔がはっきり見えた。
「……お前……宮園、か?」
目の前の瞳が、わずかに揺れる。
彼女は何も答えず、ただ視線を逸らした。
テレビで見た舞台上の光は、今はもうどこにもなかった。
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