第14話 屋上の再会


夜のリビング

テーブルの上には読みかけの参考書、BGM代わりに流しているのは情報番組。

ふと、画面に鮮やかなステージの映像が映った。


センターで踊る一人の女性。

高く結い上げた黒髪、しなやかな動き、作り物みたいに整った笑顔。

──宮園沙耶。


佐伯の幼なじみで、二人いる幼なじみキャラのうちのひとり。

宮園は小学生の頃まで佐伯とべったり一緒だったらしい。

俺が知っているのは、主にゲームの記憶からだ。


 小学高学年の頃、宮園は佐伯のことを好きになった。

でもその気持ちは伝えられないまま、彼女は芸能の道へ。

高校で佐伯と再会した時には、すでにアイドルとして華々しくデビューしていた

ゲーム本編でも、現実でも。


 もしも佐伯が宮園ルートを選んだ場合、彼女はアイドルを辞め、普通の女の子として佐伯の隣にいる未来が描かれていた。

 だがこの世界では、そのルートは選ばれなかった。


 結果、彼女は今もアイドルとして第一線に立ち続けている。

 眩しいスポットライトの中、完璧な笑顔でファンの歓声を受けているけれど


……その笑顔の奥に、どこか影のようなものを感じるのは

気のせいだろうか。



 翌日。

 バイトの休憩時間にビルの裏口に出た。

ここは関係者以外ほとんど来ない、古いオフィスビルだ。

俺は、そのオフィスビルの一階のコンビニで働いている。


ふと見上げると、屋上のフェンス越しに人影があった。


 風に揺れるコート。

 その人物は、フェンスの内側ではなく──外側に立っていた。


胸が冷たくなる。

駆け足でビル内へ入り、非常階段を一気に駆け上がった。



 屋上に出た瞬間、冷たい風が頬を打った。

 フェンスの外、かすかに震える背中。

 街の灯りが、彼女の輪郭を青白く照らしている。


「──やめろ!」


 振り返った顔は、驚きで見開かれていた。

 その一瞬の隙に、俺はフェンスを開けて腕を掴む。


「離して……っ」


「離すかよ」


 思い切り引き寄せた拍子に、彼女は俺の胸にぶつかった。

細い肩越しに、冷えた髪が頬に触れる。

その感触で、ようやく顔がはっきり見えた。


「……お前……宮園、か?」


目の前の瞳が、わずかに揺れる。

彼女は何も答えず、ただ視線を逸らした。


テレビで見た舞台上の光は、今はもうどこにもなかった。

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