第5話 風天のミームン
🌻ミームン谷夏祭り:風天の口上
ミームン谷の夏祭り。社の境内では、妖精たちの子供たちが駆けまわり、大人たちが踊っている。境内には無数の風鈴も吊るされていて、風が吹くたび、チリンチリンと音が鳴り、願いが書かれた短冊が揺れる。
社の中央には、ひときわ賑やかな風鈴屋台があった。風鈴屋台の主は、風天のミームン。旅を愛する風の妖精だが、腹巻きに風車をさし、口上はまるでフーテンの寅さんだった。
ミームン:「さぁさぁお立ち会い!こちらにございますは、“風に願いを乗せる鈴”!ただの風鈴じゃござんせん。こいつに願いを書いた紙切れを吊るすと、願いが化けて鈴の音に変わる。それを風が天まで届けて、お天道様が願いを叶えてくれるっていう、そいつは有り難いものなんでござんす!」
トットちゃんが風鈴を一つ手に取る。そばにいたシズマロが囁く。
シズマロ: 鏡の国では願いは願えば叶わない、願いは天まで届かない。いい加減な話しですぞ、トットちゃん。
ノロリ: 口をパクパクさせているが、声は出ない。
ミームンはお腹の腹巻にさした風車をくるりと回し、「何だか変な風向きだねぇ」とおどけて笑う。
ミームン:お嬢ちゃん、風ってのは気紛れでねぇ。叶わないなんて言われると、馬鹿にするんじゃねぇ、なんて思ってるかも知れないよ。どうだい、試しに買ってみるかい?
トットちゃん: お金はないけど、記憶が集まる谷に行きたいの。お願い、風さん、願いを叶えて、
と言って、トットちゃんはミームンの風車にフーっと息を吹きかけた。
ミームン:お嬢ちゃん、ただじゃぁ、そこには行けねぇなぁ。まあ、記憶の谷なら、どのみち風任せってやつだけどね、
と笑って済ませようとしたが、「何だい?また風向きが変わったよ」と、猛烈に回転しているお腹の風車を眺めている。
シズマロ : わしが風鈴を一つ買おう。トットちゃんは鏡の国の外からやって来た。この子の願いであれば届くのかもしれん。
ミームン: へー、お嬢ちゃん、外から来たのかい、でも、なんで記憶の谷なんかに行きたいんだい?
トットちゃん: トットちゃんしかいないって、お願いされたから。本当はスパイの方が好きだけど、探偵ごっこで、王女様と人魚王子を探すの。
ミームンはトットちゃんが異国で、何の得にもならない人探しをしていると知ると、親しげに肩をぽんと叩いてこう言った。
ミームン:「記憶の谷?禁じの谷だか何だか知らねぇが、行こうじゃねぇか。掟なんて、風が吹けば飛んじまうさ。」
トットちゃん : 「行けるの?どうやって行くか知ってるの?」
ミームン : 「知らねぇなぁ。でもミームン谷の地図なら持ってるよ。禁じられた谷、おいらも一度行ってみたかったんだ」
そして、ミームンはお腹の腹巻から風の地図を取り出す。だが地図は風に吹かれてすぐに飛んでいく。
ミームン:「あっ、飛んじまった。おい、こら、待てって、、、あぁあ、いっちまったよ。ま、風任せってやつだ。」
風の妖精が、大切な地図を風にさらわれ、慌てる様子を見て、トットちゃんとシズマロが思わず笑う、つられてミームンも笑う、まさに風天だ。
トットちゃんは、シズマロに買って貰った風鈴の短冊に『王女と人魚王子の失われた記憶を探したい』と書いて、社の聖樹に吊るす。そして風の妖精、風天のミームンが風に祈ると、願いは鈴の音とともに天まで舞い上がって行った。
ミームン: これでも風の妖精さぁ、願いを天まで届けることはできる。でも、あとは知らねぇよ。風って気紛れなやつでね、誰かのために何かをするなんて性分じゃないからね、と、ひらきなおって愛らしく笑う。
と、 風が吹き、空から一枚の地図が落ちてきた。それは、おさびし山に隠遁するスネフキンのもとに行く地図だった。 ミームンが目を細める。「あんたの願い、風が気に入ったみたいだ。」
鏡の国のトットちゃん 歩人 @Sandnight99
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