新進気鋭の噺家だってね。
それは楽しみ、一体どんな出し物だろう。
怖い噺を語る…って、そりゃ如何にも
今時分には持って来いだ。
夏の盛りも稍も過ぎて、暦の上では立秋。
少し寂しくなって来た…そんな
山中の古びた一軒家に棲む、老婆。
親族からも疎遠にされて、これといった
娯楽もなく、只独り日々を過ごす中で
晴天の霹靂 とは、これ如何に。
言わずと知れた作者の物語の構成の妙味を
たっぷりと味わえる、この掌編。
本当に 怖いモノ は一体何なのか。
まさに三つ巴の様相を呈する。読み手に
よっては 怖いモノ が全く別の貌で
不気味に微笑む。
眞っこと、見事な怪談噺。
送り出しのハネ太鼓は、山々に響く古寺の
鐘の音と共に…。