「生きる」という行為が自分自身のためだけでなく他者に力を与える最高の力

主人公のスキルが《生きる》で「生存力の向上」だけという、戦闘重視の世界では「役立たず」と断じられる設定が秀逸です。この落差が、後のカタルシスを最大化します。

村人の嘲笑、家族の反応、そして魔王軍の襲撃と「ただ逃げた」という過去が、読者に主人公の孤独と無力感を強く植え付け、感情移入を促します。

どれだけ傷ついても必ず目を開けるという描写が、スキルの真価への伏線であり、異質さ・強靭さを際立たせています。

魔王城での絶体絶命の状況は、主人公のスキル覚醒にふさわしい舞台です。

【効果:自身および半径15m以内の味方に「希望」を付与。致死ダメージを耐え、一度だけ立ち上がる。】 この能力が、彼の「生き続ける姿」をそのまま具現化したものであり、テーマと能力が完全に一致しています。能力バトルものとしての面白さと、物語の感動が融合した、最高の覚醒描写です。

「お前は……希望の具現化だったんだ」という仲間の言葉が、主人公の存在意義を定義し、物語を美しく締めくくっています。

「生きる」という行為が、自分自身のためだけでなく、他者に力を与える最高の力になるというテーマは、深く、感動的です。

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