秩序の象徴である女聖騎士と、無法を国是とする海賊国家という価値観の衝突

「秩序の象徴」である女聖騎士と、「無法」を国是とする海賊国家という、価値観の衝突そのものを舞台に据えた異世界ファンタジー。
タイトルがすでに示している通り、設定の時点で勝負に出ており、その期待を裏切らない構成力とキャラクター描写が光る。

物語の軸となるのは、真面目で高潔、融通の利かない女聖騎士が、外交・監督役として海賊国家に赴任するという状況。普通なら剣を交えるしかない相手に「制度」と「対話」で向き合わされる点が面白い。力で解決できない環境に放り込まれた聖騎士の戸惑いと葛藤が、コメディとしてもドラマとしてもよく機能している。

また、テンポの良い会話と状況ギャグが多く、重くなりがちな価値観対立を軽やかに読ませるバランス感覚も秀逸。真面目すぎる主人公が、荒くれ者たちに振り回されながらも、結果的に信頼を勝ち取っていく展開は爽快感がある。

総じて本作は、
「異世界×文化衝突×堅物ヒロイン」という王道要素を、海賊国家という一癖ある舞台で磨き上げた良作だ。
コメディを楽しみたい読者にも、キャラクターの内面成長を味わいたい読者にもおすすめできる一作である。

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