歪な恋

東井タカヒロ

第1話

「僕が死にそうな時は君が僕を生かしてくれるかい?」

「はい!もちろん!」


僕達は似たような境遇だった。歪な家庭で過ごして、何事も上手くはいかなかった。

ただ信じられるものすら消えかかった時、

ただがむしゃらに生きることを選んだ君とただひたすらに死にたいと思った僕。

少し違うだけでまるで違う道を歩んでいる。


「似た者同士惹かれ合うなんてな、死にたいよ」

「もう死にたいなんて言わせません!私があなたに死ぬ暇を与えないぐらい生かしてみせます!」


彼女には驚かされていてばかりだ。入学してから今まで飽きずに、めげずに、ずっと生きろと言ってくれた。

本当はもう死んでいるはずだった。もう此処にはいないはずだった。

だけど、だけど彼女が僕を此処まで生かしてくれた。いや、これからもずっと僕を生かしてくれるだろう。

今も僕は死にたいと思っているのだろうか。


…僕は彼女と付き合いたいと思っている。

死にたいとなんて気持ちが押しつぶされるぐらいに

僕は彼女のことから目を離すことが出来ない。

「僕と付き合ってくれるかい?」

「はい!」

こうして僕は彼女と付き合った。

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歪な恋 東井タカヒロ @touitakahiro

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