ロンドンの魔術師

東井タカヒロ

黒幕の魔術師

 魔術師。それは道具を介し、魔法を使う者達のことである。その中でも優秀な者には2つ名が付く。そして、彼の2つ名は黒幕の魔術師。

「今日も寒いな」

 クリスマスが近づく冬の中旬。

 華麗に飾られたクリスマスツリーを眺めながら誰かを待つ男がいた。

 黒いコートに、襟には金色バッチが付いている。

 時計を見ると、時計の針は17時を指していた。

「遅いな」

 待つこと数分。

「わりぃ、遅くなった」

「遅いぞ」

 約束の時間に遅れてやって来たのは、白いコートを来た元最強の吸血鬼だ。

「2時間も待っていると小腹が空いたな」

 吸血鬼は時計の方を指指して言った。

「ティータイムはとっくに過ぎてるぞ」

「誰のせいだと思ってるんだ。ここにいても寒いだけだ。どこか行こう」

吸血鬼と男は喫茶店が並ぶ通りの方へ歩き始めた。

「そういえば名前なんだっけ」

「吸血鬼、昨日も教えただろ。アイズだ、アイズ・ローベル。」

「そうだったなアイズ」

アイズは呆れたかのようにため息を着く。

すると吸血鬼が突然聞いてきた。

「アイズはなんで魔術師なんかやってるんだ?」

「どうしてそれを今聞く」

「だって、魔法使いの才能もあるじゃないか」

「俺が魔法使いをしない理由は……」

「なぁアイズ、あそこの店のスイーツ美味そうじゃないか?」

「人が話してるうちだってのに、続きはそこで話そう。」

二人は喫茶店。「ココラ」に入る。通りに面していて、最近出来たような店ようだった。

メニューを開き、アイズは悩む。そうこうしていると店員がやって来た。

「ご注文はどうなさいますか?」

「俺は紅茶とホットケーキを」

「僕はコーヒーで」

「かしこまりました」

「アイズ、かなり食うんだな」

「悪いか?」

吸血鬼は無言で首を横に振った。

「俺が魔法使いをしない理由だが、理由はただ1つ」

「人間を辞めるからだ」

吸血鬼はしばらくの間開いた口が閉じなかった。

「これは傑作だな、魔術師の中でも6人しかいないとされる魔術師協会の金バッチを付けてるお前がっw、人間を辞めるwww。十分今でも辞めてるよ」

吸血鬼は店内に響き渡るほど笑った。

「何か一線を超えてしまうんだ。」

「一線ねぇ」

「吸血鬼、お前はこのロンドンは不純物だからだとは思ったことはあるか?」

「どうしたんだ急に」

アイズは吸血鬼に物凄い圧をかける。

「良いから答えろ」

「どういう意味か分からんが、ロンドンどころか世界全体がそうだと思うぜ。この世界に完璧を存在しない。必ず欠陥がある。僕が心臓を潰されたら死ぬように」

アイズはしばらくの沈黙の後「そうか」とだけ言った。

「ご注文の紅茶とコーヒー、そしてホットケーキです」

「おおこれは美味そうだな」

「食べ切れるのか?」

「吸血鬼は血でも飲んでろ」

「そうすか」

吸血鬼はコーヒーを一口飲むとゆっくりと息を吐いた。

「さて、本題に入りたい」

「俺をここに呼び出した要件か……。正直あまり乗り気じゃないんだけどなぁ」

「魔法協会がどうも最近おかしいんだ」

「おかしい?」

「魔法協会が最近街中の至るところに魔法陣を書いてるらしいんだ」

魔法陣。中規模、大規模もしくは召喚の際に使用する陣。

「何をしようとしてるんだ?」

吸血鬼がまたコーヒーを一口飲むと話を続ける。

「正直な話、検討が付かない。ただ、これじゃないかってのがある」

「何だ?」

「ソロモン72柱の召喚」

「魔法協会は正気なのか?」

アイズの目からかなりの動揺が受け取れる。

「あくまでも予想に過ぎない。ただ、魔法陣の配置がな」

「どうなってるんだ」

「ロンドン周辺を囲うように配置してる。外の円形はもう完成してるんじゃないかな」

「吸血鬼はそれで良いのかよ」

「もちろん無視出来ない。だからこうしてお前に協力を要請してる」

この話が真実であるのなら、大規模魔法以上は確定。ロンドンを犠牲にまで出す魔族となると……。

「その可能性が高いな」

アイズの怒声が店内に響く。

「魔法協会は悪魔と契約して、何を求めるというんだ!?」

「分からない。ただ、魔法が発動する前に阻止しなければならないのは確かだ。なぁ、黒幕の魔術師さんよ」

吸血鬼はまるでもう承諾したかのような表情で笑っていた。まだ承諾していないのに。

「分かった。出来る限りのことはしよう」

吸血鬼を俺の手を取ってお礼を言ってきた。

「ありがとう。恩に着るよ」

まだ何もしていないぞ。

二人は喫茶店を後にすると別々に別れた。

「もう行くのか、吸血鬼。」

「暇じゃないもので」

そう言い、路地に姿を隠した。

「さて、魔術師協会に聞いて見ますか」

魔術師協会の生き方は電話BOXに入り、特定のダイヤルを入れ、受話器を取ると行ける仕組みだ。ダイヤルの裏板は魔法文字になっており、それがキーとなる。そして電話BOXの地面に付けられてる魔法陣が転移がしてくれるというわけだ。

魔術師協会の本部がどこにあるかは誰も知らない。

受付のお姉さんに会長と出会えるか聞いてみるか。

「おや、珍しいですね黒幕の魔術師」

「お久しぶりですシスター。会長と面会って出来るかな」

「少々お待ち下さい」

受付のお姉さんは机から資料差し出すと会長について話始めた。

「会長は黒幕の魔術師が来たらこれを渡せとだけ受けたわ待っています。」

資料を開くと最近の魔法協会の動向だった。

あの爺、俺がここに来ることを読んでやがったのか。

「ありがとな」

受付にお礼を言うと俺は魔術師協会を後にした。

「え!?もう行かれるんですか!?」

受付は俺を引き留めようとした。

「あぁ、こんなところにはいつまでも居る訳にはいかないから」

「そうですか・・」

受付は少し悲しそうな顔をしたが、俺には関係なかった。

吸血鬼の予想通り魔法協会はソロモン72柱のうちの「」を呼び出そうとしているらしい。

「たっくこれだから魔法を使う者は」

理由はより上位の魔法を習得する為と報告書には書かれていた。

たださえ協会間でのバランスが崩れかかっているのに、それにトドメを指すようなものじゃないか。

俺はスマホを取り出し、ある人へ電話をかける。

「なんだ黒幕の魔術師が電話とは珍しいのう」

「仕事だ。不老の魔術師」

電話の先は不老の魔術師。魔術師協会発足からいる金バッチの魔術師だ。ただ、気分屋でどこに居るかは魔術師協会でさえ把握出来ない。俺とは個人的に繋がっている。

「内容はなにかのう」

「魔法協会と吸血鬼を潰す」

「吸血鬼まで潰すのか?お主の友は吸血鬼だろう」

「関係ないね。吸血鬼も潰す」

不老の魔術師は納得し、そのまま電話を切った。

「たっくこれだから魔術師は嫌いなんだ」

不老の魔術師め、電話をしながら思考を魔術で読みやがって。

そして俺はもう一人に電話をかける

「吸血鬼。相手の目的が分かったぞ」

「やっぱりソロモンか?」

「あぁそうだ。そこで魔法協会を潰す。」

「そこまでやるのか!?」

「何人であろうとこのロンドンに影を堕とす者は排除する」

「そうか。どこで合流する?」

「さっき会った喫茶店だな」

そして速攻で電話を切る。


「これで召喚は阻止出来たんだよな」

吸血鬼は死体が持っている本を持ち上げる。

「なんだこの本は?『平和の魔導』なんだそれ」

吸血鬼は本を見るとそこに書かれたいたのはソロモン72柱召喚の魔法陣は無く、暖かい雪を降らす魔法陣だけが載っていた。

は?待て待て。じゃ、魔法協会が書いていた陣はただのクリスマスイベント?何故吸血鬼と魔法使いは戦ったんだ?待てよ。ソロモン72柱の情報を教えたのは――――。

背中から胸を貫かれ、心臓を潰される。と同時に大量の血が吐血する。

振り返ると吸血鬼の背中を貫いてるアイズの姿があった。

「てめぇが黒幕か」

アイズは背中から手を抜くと、吸血鬼を蹴り飛ばした。

吸血鬼は今にも死にそうになりながらゆっくりと立ち上がる。

「そうか。君は心臓を潰しても数分は生きてるんだったな。化け物め」

「笑えねぇ冗談だ」

魔術師から目を離すとそこには魔術師の姿はなかった。どこだ!?

後ろか。「俺は逃げさせてもらう」

「最後に聞かせろ。何故こんなことをした」

「ロンドンは純白でなければいけない。不純物が混じっててはいけないんだ。だから僕は魔法とか吸血鬼とか魔術とかは全て葬り去る。」

「それが本心かよ。黒幕の魔術師」

その言葉を最後に吸血鬼が立ち上がることは2度となかった。


あぁ魔術協会まで壊滅させてもスッキリしない理由が分かった。

 そうして自分の襟を見る。

「俺も魔術師じゃないか」

 不純物は俺も入るのか。それもそうだな。純白になったロンドンを見ることは出来ないが、ロンドンは純白になるんだ。俺は胸ポケットにしまっていた拳銃を取り出し、こめかみにに向ける。

「拳銃とか魔術師らしくねぇなこれりゃ」

俺はこれで良かったな…………。

「思い出した」

1つやり残したことがあったな。みんなとご飯食ってねぇや

そして俺は拳銃の引き金を弾いた。

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ロンドンの魔術師 東井タカヒロ @touitakahiro

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