うわきもん
蒼色 柊
瞳の先
幸「咲良が好きだ。」
桜が咲く春の日、高校の校舎裏で僕はそう呟いた。
募らせた11年間分の思いを幼馴染の彼女に伝えたのだ。
可愛くて、優しくて、純粋で、笑顔が無邪気な君。
僕の言葉に頬を染め、僕を見つめて恥ずかしそうに頷いたその表情、目線
その一つひとつが胸にぎゅっと刺さって、息が詰まるほど熱かった。
あぁやっと、やっと気持ちが伝わった。
胸がギュッと熱くなって涙が溢れる。
彼女は手を伸ばし僕の頬に触れ、
顔を引き寄せられその桜色の唇が迫る、
その瞬間、
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姉「…幸!早く起きな!!! 」
耳をつんざくような声と真っ白な光が視界を襲う。
姉「ほら幸、学校なんでしょ?私もう行くからね!」
幸せな世界から呼び戻した張本人の姉が部屋の向こうから呼びかけてくる。
幸「…うん。」
短い返事を返し、少し重たい体を起こした。
用意してもらった菓子パンを口に放り込んで、制服に着替える。
テレビを消すと外から挨拶が聞こえてくる。
聞き馴染みのある夢の中で聴いた声。
誰にでも優しくてみんなに慕われている、可愛くて愛おしい
僕の幼馴染だ。
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ガヤガヤとした声が教室から溢れ出していて、
僕は後ろの扉から挨拶もせずに入り、
窓側の隅にある僕の席に向かう。
そこにはいつも通り、咲良の友達とは思いたくないクラスメイト達が占領している。
僕の机に腰を掛け、談笑を周りに気を使わずしている様子を見て
僕は声をかけることはせず近くでじっと立っている。
「ねぇヤバない、やっぱ最高!地下しか勝たんよね〜」
「やっぱそうよねぇーうちも最近シュンくんにハマっててさぁ」
「あーわかるー、うちもクールなシンくんがまじ推せてさぁ!」
突っ立っているだけだから気づいていないのか、それともあえて無視しているのか分からない。
ただ、いつまでも退かない姿と荷物の重さが重なって苛立ちを感じ始めていた。
そんな時優しく肩をトントンと叩かれた。
咲良「幸くん?」
その声に反射的に振り向くと、そこに僕の愛おしい人が立っていた。
幸「さ…伊藤、さん」
咲良「あ〜!そうゆうことね!みんな、そこどいたげてー!」
咲良は僕が声をかけれないことを察して呼びかけてくれた
占領してた人達はこっちを少しチラッと見て
「ん?…あぁごめんごめん気づかんかったわ!」
と言って自分の机に行くのではなく、僕の机のすぐそばでまただべり始めた。
うるさいから自分の席へ戻って欲しかったけど
咲良がこっちを見て、ごめんね!と言わんばかりのポーズをしていて
その可愛らしさにそんな事、気にもならなくなって大人しく空いた席に着いた。
騒音の中に好きな人の声が溶け込み始めその騒音さえも、
もっと聞きたいと思うようになり始めた。
「咲良〜あんたは地下アイドルとか興味ないわけ?」
咲良「地下アイドル?どうゆうの?」
「こーゆうの!うちらが推してんのはこのグループ!」
咲良「スマホ持ってきちゃダメじゃん…Chasing Prism?へー、私初めて見る!」
「まじ?今結構話題になりつつあるんだよ!」
「これ、メンバーの顔見てみて!咲良はどの人が良さげ?」
咲良「えー…急に言われてもなぁ」
うーん…と一人一人の顔をスマホで操作しみている咲良。
好きなタイプだとか聴いたことも見たこともないし、すごく気になる。
教科書を立てて読むふりをしながら自然に見える位置で咲良の方に向き直した。
咲良「…あ」
次の瞬間、スライドさせる咲良の指先がぴたりと止まり、
その目はキラキラと輝きに満ちて、ほんのり頬が赤く染まっていく。
そして手を口元に持っていき、
咲良「…この人、かっこいい」
と一言呟いた。
その顔はまるで、夢の中で僕の告白をOKした時によく酷似ていて。
でも僕は、あの夢の中で感じたときめきとは違う。
言葉にできないような胸のざわめきと、ひんやりした冷や汗が背中を伝う。
僕は、咲良の中で何かが変わったのを黙って感じ取ってしまった。
うわきもん 蒼色 柊 @aoirosyuu
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