夢と死の境界を描く静謐な物語
- ★★★ Excellent!!!
<プロローグ1〜4を読んでのレビューです>
物語は夢と現実のあいだを漂うように始まります。幼い少年の高熱という切実な状況と、その内面で展開される深淵の夢。その対比が、静かでありながら重い緊張を保っています。言葉は抑制されているのに、描かれる光景は不穏で美しく、読む側にじわじわと不安と期待を同時に植え付けます。
個人的に印象的だったのは、
「深い海の底に降り積もるという雪のように」
という一文でした。視覚と感覚を重ね合わせ、静けさと恐怖を同時に喚起する比喩。その柔らかさの中に、不可避の落下を受け入れる諦念が響いていて、この物語全体の基調を象徴していると感じました。
母と子、医者とのやりとりも決して感情的に描かれず、簡素な言葉で淡々と進む。それゆえに余白が大きく、かえってその奥にある感情が強く伝わってきます。夢を呼び戻す声の存在、童話『ダーステイルズ』という謎めいたモチーフ。いずれも伏線のように配置されており、今後の展開を思わせて期待を抱かせます。
惹かれたのは、夢の描写の繊細さと、現実の冷たさとの均衡です。どちらも仮構のようでありながら、境界を失わせるように流れ込んでくる。この物語がどこに辿り着くのか、先を読み進めたくなります。