妖霊媒相談所へようこそ〜安倍晴翔と蓮香さんの物語〜
黄昏夏目
第1話ようこそ妖霊媒相談所へ
京都の穏やかな街、しずく街の片隅にひっそりとたたずむたった一つの相談所、妖霊媒相談所。この世に未練が残っていたり、うまく成仏できなかった妖怪たちを成仏させ、導くべき所へ導くと言う。
これは僕、安倍晴翔と大妖怪九尾の狐、麗花さんの、運命を変えたお話です。
「ようこそ、妖霊媒相談所へ......」
桜が舞う4月の朝、とある家のドアがガチャリと開いた。
「行ってきまーす」
僕の名前は安倍晴翔、どこにでも居るごく平凡な15歳です。これから本屋に行く所です。え、なんでこんな時間なのに私服なの?学校は?と思う方も多いと思います。
実は僕''とある事常"があり、今は学校にいけておりません。
とある事情については、今は言えないのでまた機会があればお話しします。
僕はあまり外には出たくないタイプなのですが、今日は人生で一番最高の日、そう
"魔法少女ステラちゃん"の新刊発売日なのです!!
魔法少女ステラちゃんとは、魔法界で生きる少女ステラちゃんが自分の魔法を使って魔法界の闇を祓っていくという大人気魔法少女漫画なのです。
僕はこの日をどんだけ待ち望んでいたことか!
数ヵ月間この新刊を買うためにどれほど家のお手伝いを頑張っていたことか…………
なので余計今回の新刊が楽しみなのです。
「新刊どうなのかな?楽しみだなー♪」
早く漫画が読みたいな〜と浮かれながら歩いていると
「いった!」
誰かに当たったので前を見てみると、いかにもアニメに出てきそうなごっついヤグザ風の大男がこっちを見て睨んでいました。
「おい!、どこ見て歩いてるんじゃゴラァ!俺様に当たっちまったじゃねぇかゴラァ!」
僕はよりによってヤクザにあたってしまったようだ。
「ひ、すみません、すみません!!」
僕は謝ったものの、ヤクザは許してくれなかった。
結局、あの後ごねるにごねて自分の名前と個人情報を話してその場は離してくれたが…………
その後も小学生に蹴られたり、道路工事で使われたコンクリートに挟まったりなど、とても散々な目に遭った…………とほほ…………
今日はついてないなと思って交差点の角を曲がると…………
「ん?」
曲がった先には小さい狐みたいなのが居た。
「子狐?珍しいな」
実を言うとしずく街では狐は人を導くことで有名で、あまり見かけないのだ。
「あ!」
見てみると小狐は足を怪我していて、動けないようだ。傷はかなりの大きさだ。どうやら目の前にある大きな木に足をひっかけてしまったようだ。
「これは痛いんじゃないの?ちょっと待っててね」
そういうと僕は近くにいるコンビニに向かった……
10分後……
「ごめんね、遅くなっちゃった」
手にはコンビニで買った包帯と消毒液を持っている。
「はいちょっと痛いけど我慢してねー」
そういうと、買った包帯と消毒液で小狐の傷を消毒して包帯を巻いた。
「よし、もう大丈夫だよー」
「コンコン」
狐は足が痛くなくなったのか、ぴょんぴょんと元気に飛び跳ねている。
「元気になってよかった〜」
お金はないから漫画は買えなくなったけど……まぁいっか!
僕が家に戻るために立ち去ろうとすると……
「コンコン、コンコン」
治療した小狐がこっちに来てと言わんばかりにこっちを向いている。
「ついてきてきて欲しいの?」
「コン!」
そういうと小狐はさっきまでの怪我はどこに行ったのかってぐらいの速さで走り始めてしまった。
「あっ、待って!」
そう言って僕は狐を追いかけた。
普通はここで追いかけないと思いますが、僕にはなぜかこの狐を追いかけなせればならないような気がした…………
小狐は街の道などを曲がったり小道に入ったりなど、かなり歪なルートを歩いている。
一体どこに連れて行くつもりだろう…………
その子狐は街をの片隅まで行き、片隅にある古い家の前で止まった。
その家を見た瞬間、僕は昔の家を思い出した。
目の前には表札が書かれている門、漫画でしか見たことがない玄関扉、日本瓦の黒い屋根……和式の家のようだ、ただ、庭にはたくさんの種類の花が咲いているので、和式と洋式を組み合わせたような外観になっている。
「これは……す、すごい……」
僕はあまり凄さに圧倒してしまった。
小狐は僕の方を見ながら門を通った。
僕もそれにつられて門を通った。
シュン(擬音)
一瞬、何か気配がしたが、気のせいだろう。
門を通った直後、和式の家の玄関扉がガラガラっと音を立てて開いた。
「おかえり野狐、散歩はどうじゃった?」
ドアから出てきたのは、袴姿で後ろには大きなリボンをしているかなり顔の整った九尾の狐だった
「え、よ、妖怪?!」
「お、よしよし野狐、ちゃんと依頼人を連れてこられたか!」
彼女は小狐をこれでもかというくらいなでなでした後
こちらを向いた
「ようこそ妖霊媒相談所へ、依頼はなんじゃ」
彼女が僕に向かって尋ねる。
「え、い、依頼?」
「そうじゃ、ここは相談所.....表札を見てきたんじゃろ?」
「え、表札?」
僕は慌てて家の表札を見に行った。
確かに書いてあった........表札の下に赤で小さく..........
「これじゃあわかんないよ......」
「そ、それより依頼はなんじゃ?」
彼女が顔を赤めて言った。
「い、依頼なんてないです! 僕はあなたの隣にいるその狐を追いかけてきただけで」
「ん、狐?」
彼女は隣にいる小狐を見つめた。
「あぁ、こいつはわしの使いの野狐じゃ、この時間はいつも散歩に出しておる」
その狐はこっちを見てニコニコしながら尻尾を振っている。
まるで仕事ができたから褒めてと言わんばかりに.........
「うん?」
蓮香さんが小狐の包帯に気づいたようだ。
「なんじゃ、野狐、怪我でもしたんか?」
「あ、その子怪我してたので、簡単ですが処置をしました。」
「そうか、助かった、礼を言うぞ……」
「い、いえ、そんな大した事してないので……」
「そういえば自己紹介がまだじゃったな」
彼女がこっちを振り向きながら言った。
「私はここの室長をしておる、大妖怪九尾の狐の蓮香じゃ、よろしくの」
そう言った姿はまるで子供のように一瞬見えた。
「お主の名前はなんなんじゃ?」
「な、名前ですか……」
僕は少しびっくりしてしまった、名前を聞かれたのは久しぶりだったから......
「そうじゃ、わしが言ったから次はお主じゃろ?」
「ぼ、僕の名前は安倍晴翔ですけど…」
そう言った瞬間、麗花さんが少し驚いた顔をしていたような気がするが、気のせいだろう。
「そうか....安倍晴翔、いい名前じゃな」
そう言った蓮香さんはどこか懐かしい顔をしていた...
「しかし苗字が安倍か……漢字はどう描くんじゃ?」
「え、えーと」
周りに落ちている小枝を晴翔が手に取り、庭に中くらいの字で安倍と書く。
「なるほど……安全の安に倍の倍か……」
こんなこと知りたいなんて……僕の苗字に何かあるんだろうか?
「晴翔、お主安倍晴明の子孫じゃろ……
どおりで聞いたことある苗字だと思ったわ、晴明は有名だからの……」
「?、安倍晴明?、誰ですか?」
顔がはてなマークになっている。
「昔の有名な陰陽師じゃ、平安時代に活躍しておって、帝、今でいう天皇の依頼を受けて、京都中の妖怪を全て祓ってしまった、ものすごい力を持った天才陰陽師じゃよ」
黒くて少し長い髪で、陰陽服を着た20代ぐらいの男が、髪で顔がよくわからないものの、口元がにやりとわらった姿が頭に浮かんだ。
そんなすごい人だったんだ、僕のご先祖様…………
シュン(擬音)
入るときに変な感じがしたのも、なんかご先祖様に関係ありそうだな……
「そう言えば、ここってなんなんですか?なんか妖霊媒相談所って言ってだと思うんですけど……」
「え、お、お前、妖霊媒相談所を知らんのか!人間の世界では有名なんじゃぞ!」
「はい、全く」
僕はアニメにしか興味が無いので、そういう噂は聞かないのだ。
「はぁー、全く、いいか、よーく聞いておくんじゃよ」
そういうと蓮香さんは深呼吸をした。
「ここは、妖霊媒相談所、この世に未練が残っていたり、うまく成仏できなかった妖怪たちを成仏させ、導くべき所へ導くこの世に一つしかない、すごい相談所なんじゃよ、ちゃんと知っておれ」
「へー、なんか漫画みたいですね」
「漫画みたいで済ませるな!!」
蓮香さんがものすごい形相僕を睨んでいる。
「全く……、にしてもその晴翔の"特殊な力"はすごいのー、他に何かできるのか?」
「えっと、それはわからないですけど、妖怪を祓うことと、結界を破ることはできます。」
「なるほど、"特殊な力"、人間……そうだじゃ!」
蓮香さんが何か思いついたのか、僕に向かって
「なぁ、晴翔、お前、わしの部下になれ」
と言ってきた。
「え、ぶ、ぶか?」
「そうじゃ、ちょうど人が欲しいと思っておったのじゃ、お主は"特殊な力"もあるし、これも何かの縁じゃろう、それにお主は人間じゃし、その方が依頼人を話しやすいじゃろ」
「で、でも僕そんな器じゃあないですし……」
「じゃあお主はこのまま一生部屋に閉じこもってるのか?」
「え……、どうしてそれを知って……」
そんな事蓮香さんには一言も言って無いのに……
「九尾の狐にはな、千里眼という能力があるのじゃ、お前がどういう状況なんてすぐわかる、考えてることまでは分から無いが……」
「…………!」
「なぁ、晴翔……」
蓮香さんがずかずかと足音を立ててこっちに来た。
「本当にこのままでいいのか?、一生誰とも関わらないで、ただ一人の孤独な人生で……」
「…………」
僕は拳をギュッと握った。
「確かに僕も嫌です、一人は、でも……」
晴翔の顔が暗くなる。
「僕は怖いんです、人と関わるのが……昔"色々あった"ので……」
「…………そうか……」
蓮香さんは考えた。
「だったらなおさら部下になるべきじゃな」
「え……」
「わしにはお前の経験したことはわからん、じゃが……」
蓮香さんが後ろを向いた
「ここにはいろんな人間が来る、それこそ、お主のような人も来るぞ」
「…………!」
「そんな人を見たらわかると思うぞ、お主は一人ではないと……」
蓮香さんはこちらに向き直した。
「だからなれ、晴翔、わしの部下に、わしがお前を導いてやる、そして、室長としてお前を一人ではないとわからせてやる!」
「…………!」
そう言った蓮香さんは、風でまった桜の花びらと光る夕日に照らされて、今までにないほどに自信に満ちた顔をしていた…………
「……はは、それを言われたら断れませんね」
そう言った晴翔はさっきと変わってにっこりとしている。
「これからもよろしくお願いします。蓮香さん」
「…………!あぁ、よろしくの」
蓮香さんがニカっと笑った。
「ではこれでもう晴翔はわしの部下じゃな、早速仕事だから早く行くぞ」
「え、もうですか、僕まだ部下になったばっかなんですけど……」
「もうなったんじゃからごちゃごちゃいわん、サボったら承知しないからな」
「え」
「では行くぞ〜」
麗花さんが僕の手を取ってものすごい速さで走っている。
「え、えー?!」
これが、僕と蓮香さんの出会いであった。
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