書皮ノススメ

一視信乃

ススメというよりオススメがあったら教えてくださいという話

 私は“しょ”が好きである。


 書皮とは中国語で、本の表紙やブックカバーを意味する言葉だが、ここでいうそれは、書店で本を買ったときにかけてくれる紙のカバーのことだ。


 小さい頃は、うちから徒歩十分程度のところにあった個人経営の店で本を買っており、そこはコミックにカバーをかけてくれなかったため、書皮に興味を持つこともなかった。


 しかし、少し成長して行動範囲が広くなると、違う書店へ行くようにもなり、店員さんからカバーをかけるか聞かれるようになった。


 答えはもちろん「お願いします」一択だ。


 おこづかいで買った大事な本を汚したくはない。


 カバーをかけてもらった本を持っているとなんだか大人になったみたいで嬉しかったし、書店ごとに意匠が異なるカバーを見るのも面白い。


 なかには、お洒落しゃれなものや可愛いものもあって、私はすっかり書皮蒐集しゅうしゅうにハマってしまった。


 まだ見ぬ書皮を求め、自転車で行ける店にはすべて行ってみたし、都心まで行く定期があったときは、ひとつひとつ途中下車して書店めぐりをした。


 すごく楽しかった。


 だが最近は、外出自粛要請があったり単に忙しかったりであまり遠出をしなくなったし、少しでも得をしようとポイント還元率の高い店やクレジットで買うと割引される店でばかり本を買うようになり、書皮は二の次になってしまった。


 おまけに書店の数自体どんどん少なくなってきている。


 うちの近くの個人経営の店も今はもうない。


 私の書皮への愛も、このままついえてしまうのか……。


 ところが、つい先日、図書館である本を見つけ、私の書皮愛に再び火がついた。


 それは、『カバー、おかけしますか? 本屋さんのブックカバー集』という、文字どおり書皮の本だ。


 前から気になっていたこれが、まさか図書館にあったなんて。


 続刊や他の書皮の本もあわせて借りて読み、私の心は幼いころのように大いにときめいた。


 書皮友好協会厳選の書皮はどれもみな素晴らしくコレクションに加えたくなったし、書皮にまつわるエッセイなど共感しかない。


 書皮目当てで書店へ行ったのに、欲しい本が売ってなくて手に入らなかった悔しさを思い出した。


 書皮目当てといえども、欲しくない本を買うのはやはり邪道なのだ。


 ああ、私も書皮友好協会に入りたかった……。


 そんな思いとともに、また素敵な書皮を手に入れるため書店めぐりをしたくなりウズウズしてしまった。


 書皮の歴史やそれに込められた書店の思い、そして、今や日本にしかないものだということを知り、ますます書皮が愛おしく思える。


 同じ店でも突然デザインが変わったりするし、閉店によりなくなってしまう書皮もある。


 まずは以前手に入らなかったあの店の書皮が欲しいが、まだちゃんとあるだろうか。


 それから次はどこへ行こう?


 考えるだけでワクワクが止まらない。


 この世に書皮がある限り、書皮蒐集はやめられそうにない。


 改めてそう思った。


       *


 それはさておき、これをお読みの皆さまにも、お気に入りの書皮ってありますか?


 素敵な書皮をかけてくれる書店をご存知の方、よろしければ教えてください。


 基本都内と神奈川にしか行きませんが、遠方でも旅行などの際に立ち寄ることがあるかもしれません。


 情報お待ちしております。

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