こんな【みにくいアヒルの子】はイヤだ。

レッドハーブ

こんな【みにくいアヒルの子】はイヤだ。

むかしむかしのお話です。

アヒルの巣の中で卵が割れ、新しい命が次々と生まれてきます。


「「「 があ、があ、があ、があ 」」」


お母さんアヒルは大喜び!……でも、その中にみにくいアヒルの子が一羽いました。頭も体も他のヒナより大きかったのです。


「変なヤツ」

「デカい」

「キモい」

「一緒に遊びたくない」


兄弟たちは、みにくいアヒルの子をイジメます。


「兄弟なんだから、仲良く遊ぶの!」


お母さんはいつもそういうのですが、結局はお母さんが見ていないところでイジメられていました。


(なんで…わたしはイジメられるの…?)


そんな環境で育ったみにくいアヒルの子は、いつも一人で遊んでいました。



ある晴れた日、お母さんアヒルは、みんなを連れて、野原に行きました。


(なんで、お母さんは性格が聖人なのにその子どもたちはゴミカスなのかしら…?)


そうして物思いにふけっていると、みにくいアヒルの子は、いつのまにか迷子になってしまいました。


みにくいアヒルの子は、泣きながら歩いていると…


BANG!


突然、鉄砲の音がひびいて、猟師が撃った鉄砲に当たったカモが空から落ちてきました。びっくりした

みにくいアヒルの子は、さっと隠れふるえていると、そこへおばあさんが通りかかりました。


「かわいそうに、怖かったねぇ」


おばあさんはそういうと、みにくいアヒルの子を抱き上げて、家に連れて帰りました。 家には鶏とネコがおり、世間話をしました。


「ずいぶん暗い表情をしているな?」

「なにかあったのかい?」

「はい…実は……かくかくしかじかで……」


みにくいアヒルの子はすべてを話しました。


「そうかい…イジメ、ねぇ…」

「そうなんです!悪いヤツらなんです!」

「いや、悪いのはおまえだ」

「……え?」

「生まれや外見がどうこうじゃねぇ。おまえが弱いからいけないんだ。……いいか?所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬんだ」


(……弱……肉……強……食……!)


「弱者は肉になり、強者がそれを食って生きる。おまえ、さっき撃たれたカモを見たんだろ?あれは世の中の縮図しゅくずだよ」

「…………………」

「どんなに生まれた環境や自分の外見になげいてもこの真実からは逃れられないぜ?」

「…………………」

「新天地を探すもよし、そいつらに復讐するもよし。まぁ、しばらくここにいればいい」


いろいろ悩みましたが、みにくいアヒルの子はおばあさんの家を出て、近くの川で暮らしはじめました。自分で答をだすことにしたのです。


ふと空を見上げると、白鳥たちが美しい姿で飛んでいくのが見えました。


(僕もあんなにきれいだったら、誰にもいじめられないのかな)


そして季節は過ぎ冬を越し、やがて春が来ました。みにくいあひるの子は、ふと水にうつる自分の姿を見て声を上げました。


「白鳥…だったのか…?」


みにくいアヒルの子は、春になって、美しい白鳥に変わっていたのです。


「…ん?おまえ、もしかして…」


そこへ通りかかったのはアヒルの兄弟たちでした。

むかしのように突っかかってきます。


「お?生きてたのかぁ?」

「ハメて迷子にしたのに…運のいいヤツだ!」

「結局イジメがママにバレて勘当かんどうされちまってよぉ……テメーのせいだぞぉ!お?」

「自分だけキレイになって!許せないわ!」

「あ……あ……」

「ケケケ、こいつビビってるぜ!?」

「あはは!だっさ〜い」


白鳥のなかで幼少期の記憶がよみがえりました。

同時にネコさんの言葉を思い出しました。


ブツブツ…


「所詮この世は弱肉強食…」

「あ?なぁにブツブツ言ってんだぁ?」

「強ければ生き…弱ければ…死ぬんだぁぁ!!」


「「「う、うわぁぁぁぁ」」」


白鳥はドリルくちばしで、自分をいじめていた兄弟を穴だらけにしていきました。


「ぐはっ!」

「がふっ!」

「や、やめ…がはぁっ!!」

「み、みんな!にげろ〜」

「二度とくるな!!」


兄弟たちは一目散に逃げて行きました。

白鳥は赤い鳥になっていました。


「はぁはぁ……」


しかし、白鳥になったみにくいアヒルの子はどうしてもひっかかる点がありました。


(ちょっとまって…じゃあ、わたしの両親は育児放棄をしたってこと…?)


みにくいアヒルの子は沸々ふつふつと怒りがこみ上げてきました。


(許せない…!親のせいで不幸な幼少期を過ごしたんだから…!)


白鳥は翼を広げ、空へ羽ばたいていきました。


(見つけ次第、ドリルくちばしよ!)

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