朝が来る

もん・えな

朝が来る

 朝露が路面を濡らす。薄暗い世界に虫の音が響く。


 窓から新鮮な風が入り込み、淀んだ部屋の空気を外に連れていく。


 背中には汗が滲み、白いシャツを濡らしていた。


 目蓋が少し重たいのは、夜を徹して過ごしていたから。


 特別、何かをしていたわけではない。


 振り返れば何も残っていない。その空白が、ただ静かに重たかった。


 睡眠をとらないと肌が荒れるし、脳の処理が悪くなる、らしい。


 それをわかっていながら、睡眠を怠るとは、いったいどういった了見か。


 なにか不安があるわけではない。


 あるいは、それこそが不安の正体なのかもしれない。


 虫の羽音に鳥のさえずりが重なり始めた。


 朝が来る。


 そう呟いて、重い目蓋を閉じた。

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朝が来る もん・えな @mon_ena

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