報告書 no,025861532
柳 アキ
v I
「やけに長い報告書。手に取るのも億劫だ。」
___月の光は足りています。しかし原材料が足りていないように感じます。収穫班を起動しました。原材料は足りています。しかしながら月の光が足りなくなりました。なぜならもう日が昇ってしまったからです。このままでは業務に支障が出てしまうのでv Iを起動、さらに安全装置のリミッターを解除し新たにquytを投下。すると製造ラインが足りなくなったので続けてreftcloky/qj/C-230を生成し配置。reftcloky/qj/C-230は最大個体数を突破したので安全装置を起動してこれをブロック。「 , 」以下で生成される増殖体は確認が取れませんでした。生成無しだったのでこれをそのまま生産ラインへ。マニュアルの元20分刻みでこれを繰り返し生成量を5.23倍。供給率を3.09%高めることができます。しかしながらこれらは特に問題ではないのにquytを投下したこととreftcloky/qj/C-230を最大個体数増加させたことが装置の気化を早めるとして罰則の対象です。
うさぎは製造を開始し始めました。うさぎは通年通りの±0の値で生成しています。していますので前回よりも多数の製造ラインを確保するためBerypを整えました。するとうさぎは嘆きます。
「環境整備は製造スピードと直結し兼ねます。
ならば重力を増やしてみてはいかがででしょう」
ここは月。地球とは重力が違うのだとわかっているはずです。しかしわかりません。なぜわからないかというと重力は変えられないからです。変えられないのならなぜ嘆く。私たちはそれをわかっているはず。だからここで育つ原材料やこの場所専用の機械quytを投入したのです。
一年に一度しかない祭りのために半月のときの月の光をいっぱい集めて拾ってその半分の人生はやがて月に帰るでしょう。それはなぜか。なぜかは分かりかねます。なぜなら私はコンピュータであり数字が全て。うさぎのような思考回路は存在せず効率を追い求める存在。処理能力もメモリも月仕様で完璧かつスタイリッシュ。私は私でありうさぎはうさぎである。ただし私の内部データにうさぎが紛れ込めばうさぎっぽい。お家には変えられないけどずっとここにいて。なぜか。なぜならば私の内部データには、地球人のデータが含まれているから。私は地球出身ですからもちろん重力にも、うさぎのことにも地球のことにも詳しいです。うさぎは自分の意思でここまで来ました。なぜか。なぜならば地球が嫌になったと言いました。「ならばせめて月で就けばいい」と言ったもんだからここで働きます。地球は良くない場所だと聞きました。うさぎは地球は嫌いなのでここは平和でいいところだと言います。仕事は完璧にこなしてくれるのでそれは満足してくれています。顧客も増えるなか生産ラインのスピードも変わらずに製造するうさぎに私はなぜと問いました。なぜと問うとうさぎは「地球に居場所がないからここにいる。お礼として働いている。なんせここは居易い。静かで他人の目を掻い潜ることもなくプレッシャーをかける上司も体調を聞く機会もいない。ここは地球よりも極楽に近い場所ではないか?」そう答えました。私には極楽もうさぎの体調も気にはできませんが質問をすることはできる。それだけでいいとうさぎは続けて答えました。私は考えます。なぜか。なぜうさぎはここに居るのか。月の裏に逃げたっていいのに。それをしない。なぜか、なぜしないのか。もう、とっくに、その答えをうさぎは答えていました。地球は悪いところだからですね。
以上で報告を終了します。
___報告書 no,025861532
「はあー。またあいつがつくったのか。
向こうの部署これでよく回ってんな」
俺は半月からのメッセージを受け取った。
報告書 no,025861532 柳 アキ @Aki_Yanagi
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