約半月に一度製造する工場。人気ではあったが最近取り壊しが決定した。
と、言うのも、うさぎがアイツに心を教えたから。
心を知った機械はうさぎを知ろうとした。
仕事も忘れて。
うさぎは嬉しかったそうだ。
仕事のために“あらゆる機械”を導入する機械を見て悲しかったそうだ。
その機械たちは半月のときだけ動ける。
半月の短い時間の中で働いていることを悲しんだ。
「この機械たちはここで一生を過ごすんだ。僕たちと一緒で。ならばせめて満月のときはここを探検させてあげてはいかがかな?」
うさぎは非常に賢い。連れの仲間も同様に。
アイツを通じて来た通信には私も賛成だ。積極的に叶えてやろう、そう思った。
満月は半月よりもエネルギーが豊富だ。
だから機械たちはいつもより俊敏に動いたのだろう。
製造ラインから支障のない程度に少しずつ部品を持ち出して、それぞれパーツを持ち寄って
エネルギーは月の光。光が当たれば機械たちよりも動ける仕様に。
心を持った機械は“それ”に願いを託すようになった。
「僕たちは地球のことをよく知っているのでもはや知ろうとなんて思わない。機械はそうではないらしい。いくら僕が教えたところで知ってしまったら願望は芽生える。僕が逃げて来たところに行ってみたいと……戻ってみたいと言うんだ。」
私は頭を抱えた。でもこのときはまだ知らなかったんだ。
“本当に会いにくるなんて”
アイツらは記憶媒体と小型ロケットを飛ばして来た。
「地球を教えて」
喋るんだコイツ。
私はコイツを肩に乗せて仕事をした。
うさぎの通り「嫌になるほど、逃げ出すほど醜い姿」を見せた。うさぎが見たら蕁麻疹が出るような。
そうして返した。本部にはこのことは秘匿にした。
でもすぐに気づかれた。
人気だった半月の餅がだんだんと製造が遅くなったから。
「あの機械は最新式の……」
「絶対に効率が落ちることはないんだ!そのために俺は手立てをいくつも……」
そんなどうのこうの言われたって私はただの監視役。ご機嫌うるわしゅうとでも返そうか。
そう思っていた矢先、監査が入った。
わざわざ月まで飛んで現地視察。
結果的に機械たちが心を持っていることがわかってしまった。
スタイリッシュなAIも心を持つということはやっかいがられる。
人間たちにとって心は邪魔なよう。
自分が持っているから一番わかるんだと思う。
私は月の機械やうさぎ達のことも地球で暮らす人間達のこともよくわかる。
“私は地球で暮らすAIだから”
月製造ライン担当者名 ナンバーc-23 mz
___続いてのニュースです。今人気の半月の餅が製造ストップ。いったいなぜ?その実態を探ります