夜ノ涯、聲絶ゆる

白蛇

【ナツガタリ'25】10首連作部門

夜ノ涯、聲絶ゆる

たかどの

舞ひ堕ちて

消ゆる影

残り火のごと

我が夜を焦がる


荼毘だびの庭

けぶり立つなり

夕まぐれ

君が立ち影

幻のごと


清らなる

咲く花揺るゝ

ひかげしづ

薄霧かさね

君がたま寄る


音影に

ぞ息の音

捉へ得ず

よるかぜわたる

ひと夜の名残


きぬの香に

求めどもなほ

無聲閨むせいねや

静寂しじまに満つる

潜みの


薄きいめ

呼び掛くる君

夜の底

聲絶えぬれば

くれなゐに染む


曼珠沙華

秋風哭きて

野辺の闇

火のごと赤く

指に触れたり


朽塔婆くちとうば

雨にうたれて

音もなく

黒きしづくが

なほあたたかし


花の影

さ迷ふごとく

たゆたへば

誰そ彼時に

ほの影ひとつ


ほの灯る

篝火の影

君待てど

静寂しじまの夜に

呼ぶ聲も絶ゆ

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夜ノ涯、聲絶ゆる 白蛇 @shirohebi_495

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