面接「今回は残念ながら……」ふざけんな!
楠本恵士
第1話・これは半分実体験、半分脳内フィクション
『今回は残念ながら……採用には』
オレは部屋で飲み終わった缶飲料の容器を、ゴミ箱の中に放り込んだ。
「今回は残念ながら」
この言葉は雇い主側は一人に対して初めてでも。
何回も面接のたびに伝えられている者からしてみたら、都合のいい言葉にしか思えない。
「『今回は残念ながら』なら、もう一度面接すれば違う返答が出てくるのか! ふざけんじゃねぇよ!」
オレは放り込んだ空き缶を、ゴミ箱が拾い上げた。
(どうせ、ゴミ分別しなきゃならないからな……まったく、人生上手くいかないからムカつく)
時々考える──前の仕事を辞めて良かったのか?
『やって後悔、やらなくても後悔』どちらの選択肢を選んでも後悔は必ずある。
(辞めずに残っていた場合のシュミレーション……辞めないで良いこと【変化なく、とりあえずは毎月、給金は入ってくる】……以上)
辞めて良かったコト……①時間の余裕が出来たから行きたかったプチ旅行が出来た。
②自分の部屋と隣の部屋のゴミ山を片付けて、スッキリさせて『引っ越しの可能性ができた』部屋片付けるにも、まとまった時間が必要だった。
これは、働いていた時にはできなかった、いい機会だったと思う。
辞めたデメリット【今までみたいな収入が無くなる……】以上
オレは買ってきた、ドデカソーセージをかじり、ノンアル飲料を飲みながら考える。
(元々、辞めた有限会社の社長が、優柔不断でハッキリしない人だから……こういう事態を招いたんだよな)
辞めた会社の社長が、三年前に「もう年齢も年齢だから、会社を辞めたい」とミーティングで漏らした。
その言葉を受けた従業員が、ポツポツと辞めていき……この人が辞めたら自分も、と考えていたスキルが高い人が辞めた時。
自分も引き際だと思って……退職した。
その後は失業給付金をもらいながら、求職活動……思った通りには上手くいかない。
「今回は残念ながら」
「今回は残念ながら」
「今回は残念ながら」
面接を繰り返す中で、初めて知ったコトもあった。
〝警備の仕事は募集は積極的にしているが、その分……信用第一の仕事なので面接が厳しい〟痛くもない腹をさぐられる、プライベートを深掘りされた質問を面接の時にされる。
「お酒は飲みますか? ギャンブルはしますか? タバコは吸いますか? 借金はありますか?」
などなど、身内の細部に至るまでの、個人情報を質問してくる。
警察の取り調べて室みたいに。
極めつけなのが【身元保証人が身内や知人を含めて二名必要条件】というのには驚いた。
そこまで、完璧な人材を求めているのか?
ハローワークでは、人材不足の三大職種『介護』『トラックドライバー』『警備員』
撒き餌撒いて、面接に来た人材を「今回は残念ながら」で、突っぱねていりゃあ世話ねぇや。
◇◇◇◇◇◇
「失業給付金も切れたから……マジでなんとか就職して収入を得ないと……闇バイトや、生活に苦しくなって強盗に手を染めちまう」
オレはスマホの画面で、参加登録していたネット小説コンテストの一次選考突破結果を見る……今回も名前は無かった。
「またかよ、いい加減にしろ! カクヨム……面接不採用と小説一次選考不通過のダブルは、精神的なダメージが大きいんだよ! どこまで一次選考落とせば気が済む、クソカクヨム!」
(もうカクヨムはダメダメで、この作品を残しておいても意味ないな……見切るか)と思った長編作品は一括非公開にして、別の小説サイトに移した。
意外なコトに、その小説投稿サイトの方がカクヨムよりも読者に読まれる。
人間は重なる成功体験は天に伸びるが、連続する失敗体験は心が闇に染まる。
悪い考えばかりが広がっていく。
「いざとなったら、出版社襲撃するか……作品を全然認めてくれないカクヨムがすべて悪い! クソがぁ!」
オレは脳内殺人を妄想する──カクヨム関連の某大手出版社。
「ストリートビューでもできれば、その出版社の玄関先に立つコトはできるな……わざわざ、下見で電車賃出すのももったいない」
地図見ると結構、周囲に学校も多い。
(そうか、結界か……児童や生徒の目があれば、犯行はやりにくい……考えたな)
さらに本社以外にも、分社した建物あるコトもわかった。
「ケッ、本社一択は無理なのかよ」
妄想の中で人を殺す──自分の心を守るために。
建物に放火はダメだ……過去の事件で、ガソリンの購入が難しくなっている。
ガソリンスタンドで使用目的を聞かれて「恨み重なる某出版社の床に撒いて、火のついたマッチを放り込むためです」
とは、言えない……第一放火は自分が火傷を負うリスクが大きすぎる。だいたい、今の百均ライターは火を付けたまま、ロックなんてできるのか? 却下
「やっぱり、社屋の玄関で待ち伏せして、建物から出てきた人間を、無差別に刃物で滅多突きして『誰でも良かった』フラグを立てるか」
それをやったら、人生のすべてが終わる……殺人のメリットをずっと前から考えているが、今だに【メリットなし】デメリットしか思い浮かばない。
オレの脳内殺人計画は続く。
(無差別殺人で殺す人数は三人、その時の状況によって変化する……最初に刺した人間を見て悲鳴を上げてた人間を、二番目に刃物で刺す……そして、近くにいた人間を三人目の犠牲者にする)
犠牲者の中には、今回はガキは含まないつもりだ……たぶん「今回は残念ながら」
「三人と人数を特定するのは人数は……それ以上は必要ないからだ……警察の取り調べで動機の一つとして『小説投稿サイトで、どんなに作品を書いても認めてくれなかったカクヨムが悪い!』と、伝えればオレの計画は……ち、ちょっと待て?」
オレはこの時、重大な過ちに初めて気づいた。
「人殺してカクヨムが悪いと警察に伝えても、警察は他の作品を発表している別の小説投稿サイトも調べるじゃないか……カクヨム以外の小説サイトにも迷惑が及ぶ……それはいけない」
それに、カクヨムで応援してくれた人たち……カクヨムで書いている人たちにも迷惑が及ぶ。
ガソリンの購入基準が、ある事件をきっかけに厳しくなったのと同じように、小説投稿サイトの何かが厳しく変わったらどうする?
人を殺す計画を実行するなら、それなりに覚悟を持って自分の全作品をこの世から消し去ってから……実行に移すか?
それは、それで作品の中のキャクターたちに対して悲し過ぎる。
「身内とかの人生も変わっちまうな……叔父としてそれは避けなけねば」
結局、人を殺すと周囲に迷惑がかかる、それを覚悟してやるのが殺人。
◇◇◇◇◇◇
とりあえず、オレの脳内殺害妄想は続く。
(刃物系は人を殺すには扱いが難しい、抵抗されて反対にこちらが殺傷される可能性もある……やっぱり、打撃の鈍器系……理想は肉叩きの調理器具だが、人を殺すために購入するには高価)
人を殺すには百均で売られている包丁くらいの値段で丁度いい。
「おまえらの命の値段なんて、百円くらいだ」
肉潰しの凶器(掛矢)で、被害者の頭を何も考えないで、ひたすら連打する。頭蓋骨が割れて脳ミソが飛び散る、なんでもビール瓶で叩かれた頭蓋骨は、ビンよりも頭蓋骨の方が割れるらしい。
☆『
仮面ライダー鎧武のグリドンが持っていた、ハンマーみたいアレ。
おっと忘れるところだった、事件を起こす前に携帯電話を解約して、中のデータを消去しておかねば……思い出や何もかも。
携帯電話で世間と繋がっていたのを断つ!
どうせ、刑務所に入ればスマホは没収されて使えないんだから……出て来たとしても、スマホの電池は空になっているし、契約切れている。
いっそうのコト……自殺するか、山歩きを装って滑落死。
いやいやいや、滑落で上手に首の骨を折るとか頭蓋骨を陥没させるのは、滑落の技術がいる。
狙って木や岩に頭からぶつからないと。
下手に生き延びたら、半身不随の生地獄を見る……自殺するなら確実に死なないと。
人に迷惑がかからないように……火だるまゾンビになって、誰かに抱きついて道連れにするなどもってのほか。
◆◆◆◆◆◆
いろいろと脳内の世界を広げてきたオレは、外出したカレー屋で好物のカレーを食べならスマホをいじくって書きかけの小説を見た。
(人殺しにしても、自殺するにしても……この作品は最後まで書き上げてやらないとな)
そう思ってオレはスプーンに乗せた、少し辛いカレーご飯を口に運んだ。
※これは、半分脳内殺人妄想のフィクションです
☆現在は無事に就労しています
面接「今回は残念ながら……」ふざけんな! 楠本恵士 @67853-_-
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