n=18 シェルターシールドは張っているな

余りにも予想外の威力で俺と数美は暫く呆然とする。


「……はぁ!数美、今の出経験値はどれくらい貰った?」


正気に戻った俺はすぐ数美に確認する。


「うん?2だけど」

「そうか、なら良かった」


ダンジョンの隅に移動したのは功を奏したか、いや、一応確認しておこう。


他の探索者ズーハーを殺して経験値を獲得できるのかは、実は分からない、もし、それが出来ると公言すれば、即ち自分が殺人犯を自白したと同然。


ここは念のため、軽く捜査した方がいいかもしれない。


俺は被害者捜査のため、ステータス画面を呼び出し、必要のスキルを獲得する。


「ちょっと周りの状況を確認する、【ターケットサーチ】!」


【ターケットサーチ】は【射手】系のスキル、一定範囲内に設定したスキルが使える標的を探すスキル。


そして、今設定しているのは【リバイヴ】、【リバイヴ】は探索者ズーハーを復活するスキル、但し、時間制限がある、体の損傷によって復活猶予時間が短くなる、ポーン兎みたいに木端微塵になった場合、三十分以内に復活しないといけない、だから、範囲内に被害者がいれば、今はまだ探知に引っかかるはず。


見たところ、やはり被害者はいない、取り敢えず一安心だな。


「それにしても、結構威力あるな、あのスキル」

「そうね、でも正確の威力が分からないのはちょっと困るかも」

「うん?あぁ、要は受けた攻撃を何の数値で割ったのことか」


そう、整除するだけなら、1は何でも整除できる、しかし、それだとひたすら相手の攻撃を【せいじょばりあ】で止めつつ、【しょうほう】を撃ちまくればどんな敵も余裕で倒せるから、流石にそれはないはず。


一応【せいじょばりあ】のリキャストタイムは三十秒で連打は不可能だが、別の数字で割っている可能性も考慮した方がいい。


「関弥の攻撃力があまりにも高いし、私はレベル2になったけど、【力量】は上がっていないし、かと言って魔法を撃ちたくても、【せいじょばりあ】使用中は他のスキルを使えない、検証のしようがないね」

「いや、方法ならある、このスキルを使えば何とかなるはずだ」


俺は取得したスキルを数美に見せる。


「【手加減】?」


――――――――――――――――――――――――――――――――

【手加減】(テイマー系スキル)

一定期間内、攻撃力がどんなに高くても、相手に与えるあらゆるダメージが相手の【HP】を1になるまで低下する、相手の【HP】が既に1の場合、ダメージはゼロになる。

――――――――――――――――――――――――――――――――


「そう、これを使うと俺が【HP】10のポーン兎に対してのダメージは強制的に9になる、そうすれば【せいじょばりあ】の性能が分かるはず」

「なるほど、それだとどんな割れ方でも、うさぎを倒せないね」

「早速やってみよう」


俺は2000以上ある【俊敏】とさっきついでに取った【魔物探知】を駆使して、ポーン兎を見つけ、掴み、元の場所に戻る。


先ず俺が【手加減】を発動して、数美は【せいじょばりあ】をかける、そして俺のパンチでバリアを割る、今回は顕微鏡用のスライドグラスが割ったような音がした。


そして再び【しょうほう】を撃つ、数美の手のひらから、レーザーポインターくらいのビームが出て、ポーン兎に命中したが、倒していない。


「えっと、【魔物鑑定】の結果、【HP】は3しか減っていない」

「あ、これで仕組みが分かったので、その兎はもう倒していいよ」


俺は言われた通りポーン兎の頭を吹っ飛ばし、数美の説明を待つ。


「どうやら、このスキルは整除できる最小の質数で割っているらしい、あ、関弥は質数分かる?」

「あれだろう?神父が緊張している時数えている物だろう?」

「いや、そうだけど、そうじゃない、質数は1と自分しか割れない自然数のこと」

「お、おう」


自然数はなんだ?


「例えば、ダメージが12の場合、4か3で割るではなく2で割る、15なら5ではなく3、77なら11ではなく7、そして恐らく質数の場合はその数字で割るでしょう」

「つまり……ダメージが偶数なら一番いいって事?」

「まぁ、極端に言えばそうね、少なくとも【しょうほう】の威力は受けるダメージの半分になる」


ってことはさっきの極太ビームは4000くらいの威力があるかよ……うん?


「いい考えがある、ちょっと俺と一緒にボス部屋まで行こう、しっかり掴まれ」

「え?ちょ……」


俺はお姫様抱っこの要領で数美を抱え、そのまま全力ダッシュでダンジョンを駆ける。


★★★★


「はぁ……はぁ……いきなり何なの?激しいし、早いし、もっと優しくしてよ」


ボス部屋前で数美を下ろしたら、文句が飛んできた、いや、吐けなかったから、そんなに揺れていないだろう。


「ごめん、次はもっと上手く(運搬)するから」

「って?ボス部屋へ来てどうするつもり?」

「数美を【聖なる権能】が使えるレベルまで、パワーレベリングだ、取り敢えず、パーティを組もう」


俺はステータス画面を操作して、パーティ申請を出す。


パーティを組むのは、あくまで一緒にボス部屋に入る為、故に入って、存在進化を確認したら、またすぐ切る。


よーし、どうやら存在進化は一番ステータスが高い人依存なので、問題なく発動した。


「え?存在進化?それ普通なの?」

「俺にとって普通だけど、それより、この後の手順を説明する」


俺は数美の疑問を適当に返す。


「存在進化が終えたら、一羽は見えないけど、計六羽の兎が現れるので、ナイトが乗っている兎に【せいじょばりあ】を張れ、俺がそいつを攻撃した後、何とか奴らを集まるので、その後【しょうほう】を撃てればいい」

「了解」


一通りの召喚が終えた後、数美は直ぐポーン兎に【せいじょばりあ】を掛ける。


それを確認した後、俺は一瞬でポーン兎に肉薄する。


「金竜流、みずのと雲蒸竜変うんじょうりゅうへん!」


水を纏う剣を持ちながら、俺はアラビア数字の八を描くようにポーン兎を斬る、同時に水竜もその軌跡を乗って追撃する。


思った通り、スキルでの攻撃なら、多段攻撃でも【せいじょばりあ】は完全に防げる。


からの、


「数美!目を閉じれ!フラッシュ!」


強力な閃光でルークを炙り出す。


「【挑発】!」


そして、ヘイトが俺に集めるように【挑発】を使う、このスキルを使うと、相手の攻撃力が上がるが、俺にとっては誤差レベル。


「【手加減】!」


兎たちの動きを誘導しつつ、更に攻撃で強引に奴らを並べる。


「拘束の棘!」


一列に並べたら、今度は木属性の拘束魔法で動きを止める。


「エリアリジェネレーション、エリアハイヒール!」


更に減った【HP】を回復した上に、リジェネ効果で拘束によるスリップダメージをカバーする。


「よし、今だ!撃て!」


準備が終えると、俺は部屋の隅に移動し、念のため、自分に【聖なる障壁】を張る。


「【しょうほう】!」


さっきより太く、コロニーに向けて撃てそうな金色のビームが奴らを飲み込み、跡形もなく、全てを消し飛ばした。


うわぁ、目がぁああ、っていうか撃っている本人無事かよ。


「ナニコレ、レベルってこんなに上がるもんなの?」


パーティの場合、経験値は均等に割り振られるけど、お互いソロの場合、削った【HP】の比率によって配分が変わる。


俺はボスたちの【HP】をずっと回復しているので、配分は当然ゼロ、数美が一気にレベルが上がるのは想定済み。


「何レべになった?」

「12だけど、【せいじょ】のパッシブスキルのお陰で、【MP】は500超えたよ」


【聖女】のパッシブスキル、確か【知力】1.5倍と【MP】2倍だったな、ちなみに【魔法使い】系の場合、その二つの値が逆になる。


「これで目的達成、その魔法陣に乗って帰ろう」

「ねぇ、待って」


数美は、ドロップ品を拾終えて、そのまま帰還しようとした俺を呼び止める。


「うん?」

「さっきのエリアハイヒールと他の【僧侶】系スキル、それと関弥のスキルポイントの多さ、もしかして、関弥も【聖なる権能】を持っているの?」

「そうだよ」

「じゃ何でわざわざ私と付き合ってこんな事を?自分で妹を治せるのに」


数美の言葉を聞いて、俺の口角が少し上がった。


「そっちの方が良いだろう?他の用がないなら帰るぞ」


俺は再び帰還の魔方陣の方へ向かう。


「っ!!まだ……あの約束……覚えているのか」


数美はそう呟いて、少し頬が赤く染めて、俺の後を付いた。

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nランクスキル【自然】で馬鹿された俺、実は最強 天夜水翔 @tenyasuishyo

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