第2話 思い出の道を歩く

>【効果音】足元で砂利を踏む音。遠くで子どもたちの笑い声が風に乗って届く。頭上の木々を揺らす優しい風。どこかの軒先から風鈴が一度鳴る。


さくら(そっと、からかうように寄り添って)

「悠人くん、歩き方、変わってないね。昔みたいに……思い出を踏まないように歩いてる。覚えてる?ここ、一緒に何度も歩いた道だよ。」


悠人(小さく笑って、懐かしそうに)

「毎日放課後…あなたはただ散歩を長くするためだけに、わざとゆっくり歩いていた。あなたは『門で別れるのが嫌だ』と言っていた。」


>【効果音】一枚の枯葉が足元を転がる。二人の足音が一度止まり、また歩き出す。


さくら(微笑んで、小さく息を吐く)

「見てごらん——あの古いキャンディショップはまだ営業してる。覚えてる?

あなたはいつもレモンドロップをくれたよね。なぜなら、あなたは酸っぱい味が嫌いだったから。」


悠人(苦笑しながらも優しく)

「そして、あなたはいつもブドウの飴を私の手に滑り込ませてくれた。でも、あなたはブドウが嫌いだったのに。時々、今でもその味を感じる……あなたを思うたびに。最後にもらった包み紙、まだ持ってるんだ。」


>【効果音】ポケットの中で包み紙がかすかに鳴る音。


さくら(少しはにかんで)

「悠人くんは、何でも気づくのに……何も言わなかったよね。お菓子のことも……私のことも。」


悠人(歩みを止めて、声が低くなる)

「私は怖かった。もし『愛してる』と言ったら…もしかしたら、あなたはもっと早く消えてしまうかもしれない。もしそれを胸に秘めておけば、あなたをここに留めておけるかもしれない。」


>【効果音】風が吹き、桜の枝がさわさわと揺れる。花びらがゆっくり二人の間を舞い落ちる。


さくら(柔らかく)

「でもね、言わなかった言葉って……幽霊みたいに残るんだよ、悠人くん。夜、目を閉じるたびに聞こえてたでしょ?」


悠人(目を閉じて、小さく息を吐く)

「……毎晩だよ。毎年春になるたびに……この道に呼ばれたんだ。さくら、お前に。」


>【効果音】砂利道を踏む足音がまた静かに続く。どこかで自転車のベルが一度鳴る。


さくら(ふっと笑い、耳元にそっと)

「もう、閉じ込めないで。今だけは……この風に乗せて。木々に聞かせて。私にも……聞かせて?」


悠人(かすれた声で、囁くように)

「……好きだった。今も好きだよ。ずっと……この道が、俺たちを覚えてる限り。」


>【効果音】風が静かになる。頭上で葉がかすかに揺れるだけ。一枚の花びらが足元に落ちる。


さくら(少し遠く、でも優しく)

「じゃあ……歩いて。ずっと言ってて。花びらが落ちなくなるその日まで……私はここで聞いてるから。」


>【効果音】遠くの風鈴がもう一度鳴り、二人の足音が少しずつ遠ざかる。


悠人(小さく、けれど確かに)

「……さくら……待っててくれて、ありがとう。」










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