また、桜が咲くころに会おう ~声が春を連れてくるボイスドラマ~

KEIKO

第1話 駅のホーム、春の匂い


>【効果音】遠くで電車の汽笛が鳴る。ブレーキがゆっくりと軋む音。駅のチャイムが一度だけ鳴り、柔らかな春風が悠人のコートを揺らす。桜の花びらが静かにホームに舞い降りる。


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人(低く、そっと耳元で)**

「……五年ぶりか。五つの春……五つの季節を越えても、この場所は変わらない。変わったのは俺だけだと思ってた。でも……多分、変わったのは何もなくて……変われなかったのは、俺のほうか。」


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>【効果音】一枚の花びらが悠人の袖に落ちる。指でそっと払う音が小さく響く。


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悠人(かすかに笑い、声が少し震える)

「二度と戻らないって決めたのに……夢の中で、何度もここに立ってた。……結局、心はずっとここに置いてきたんだな。」


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>【効果音】静かな足音がホームに近づく。花びらを踏まないように、慎重で柔らかな足取り。


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さくら(左耳にふっと近づくように、優しい声で)

「やっと来てくれたんだね。遅かったよ……私、ずっとこの桜の下で待ってたんだから。」


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悠人(息を呑む。胸の鼓動が速まる)

「誰……?いや……この声……まさか……さくら……?嘘だろ……夢……なのか……?」


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さくら(小さく笑い、髪が風に揺れるように右耳へ)

「相変わらずだね、悠人くんは。目の前のものに気づくのが一番遅いんだから。ここは……私と別れた時に約束した場所だよ。……寂しくなったら戻ってくるって、言ったくせに。」


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悠人(声が震える)

「髪も……風に揺れる感じも……あの時のままだ……。でも……どうして……君は……もう……。」


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>【効果音】風が少し強まり、舞い上がった花びらが二人を包むように回る。


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さくら(そっと息を吐いて、柔らかく)

「風のせいかも。桜のせいかも。……でも一番は、あなたの心が私をここに連れてきたんだと思う。」


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悠人(小さく息を飲み、声を落とし囁く)

「これが夢でもいい……お願いだ……もう少しだけ……目を覚まさせないでくれ……。」


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さくら(そっと耳元で、さらに近く)

「じゃあ……何も言わなくていいの。ただ、花びらの音を聞いてて……私と一緒に、ここで黙っていて……何も言わなかった、あの春みたいに。」


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>【効果音】一枚の花びらが悠人の肩に落ちる音。風が止み、残るのは心臓の鼓動だけ。


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悠人(小さく、途切れるように)

「……さくら……。」


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