『俺達のグレートなキャンプ番外編 弱小高校野球部に地獄の特訓(ごっこ遊び)』
海山純平
番外編 弱小高校野球部に地獄の特訓(ごっこ遊び)
俺達のグレートなキャンプ(番外編)弱小高校野球部に地獄の特訓を(夏)
第一章 石川の突然の閃き
夏の日差しが容赦なく照りつける山奥のキャンプ場。テントの中で石川はスマホを片手に何かを検索していた。
「おい、千葉!富山!」
石川の大声に、隣のテントから千葉がひょっこり顔を出す。
「どうしたんですか石川さん!今度はどんなグレートなキャンプを思いついたんですか!?」
「それがよ…」石川は画面を二人に向けた。「昨日の夜、甲子園のハイライト見てたんだけどよ、ふと思ったんだ。俺たちも野球部の特訓キャンプやってみたらどうだろうって!」
富山が慌てたようにテントから這い出してくる。
「ちょっと待って!私たち野球なんて全然できないじゃない!それに道具だって…」
「心配すんな!」石川は胸を張った。「俺が全部考えてある!まず、俺たちは弱小高校野球部って設定で、今から甲子園を目指す地獄の特訓をするんだ!」
千葉の目がキラキラ光る。
「すごいじゃないですか!僕、高校時代は帰宅部だったので野球部の青春に憧れてたんです!」
「でしょでしょ!千葉はわかってるな!」
富山はため息をついた。
「また始まった…石川の突飛な発想が…」
第二章 準備は万端!?
石川は車のトランクから次々と荷物を取り出していく。
「じゃーん!昨日の夜、コンビニとスポーツ用品店を駆け回って揃えたぜ!」
出てきたのは、明らかに子供用のプラスチックバット、ビーチボール、そして…
「石川さん、これ野球のユニフォームじゃなくて作業着じゃないですか?」
「細かいことは気にすんな!雰囲気が大事なんだよ!それに背番号も書いたぞ!」
作業着の背中には油性マジックで「10」「4」「7」と殴り書きされている。
富山が頭を抱える。
「なんで私が4番なのよ…」
「富山は昔から運動神経良かったからな!エースで4番だ!」
「私はキャンプでの運動といえばハイキング程度よ!」
「大丈夫大丈夫!気合いで何とかなる!」
第三章 地獄の特訓開始!
キャンプ場の空き地に三人が集合。石川が監督役となり、ホイッスルを首からぶら下げている。
「よし!弱小野球部『キャンプファイヤーズ』の地獄の特訓を開始する!」
「ピピー!まずは基礎体力作りだ!キャンプ場一周ランニング!」
千葉が手を挙げる。
「監督!質問があります!」
「なんだ選手!」
「僕たち、まだ朝ごはん食べてません!」
「甘い!真の野球部員は空腹など気にしない!走れ!」
三人は重い足取りでキャンプ場を走り始める。しかし、10分も経たないうちに…
「ハァハァ…監督…もう無理です…」千葉がへたり込む。
「私も…キャンプ道具背負って山登りするのとは違う疲れ方…」富山も座り込む。
石川も実は息が上がっていたが、監督として威厳を保とうとする。
「よ、よし!十分なウォーミングアップだった!次は投球練習だ!」
第四章 投球練習という名の大混乱
石川が段ボールで作った手作りのストライクゾーンを設置する。
「富山!お前がピッチャーだ!千葉はキャッチャー!俺が審判兼バッターだ!」
「えー!私投げるの!?」
「エースなんだから当然だろ!」
富山は恐る恐るビーチボールを手に取る。
「こんなフワフワしたボール、どうやって投げればいいのよ…」
「気持ちを込めるんだ!甲子園への想いを乗せて投げろ!」
富山が投げたビーチボールは、風に煽られてあさっての方向へ。
「あー!隣のサイトの洗濯物に!」
隣でバーベキューをしていた家族のお父さんが振り返る。
「すみません!」富山が慌てて謝りに行く。
「いやいや、大丈夫ですよ。何やってるんですか?面白そうですね」
石川が胸を張って答える。
「弱小野球部の特訓キャンプです!甲子園を目指してるんです!」
「へー!本格的ですね!頑張ってください!」
お父さんは笑顔で手を振って去っていく。
千葉がボソッとつぶやく。
「あの人、僕たちが本物の高校生だと思ってないですよね…」
第五章 バッティング練習で事件発生
今度は石川がバッターボックス(ただの地面に線を引いただけ)に立つ。
「よし!今度は俺がバッティングを見せてやる!富山、渾身の一球を投げてこい!」
「もう疲れたわよ…でも仕方ないわね…」
富山が投げたビーチボールを、石川が思い切りプラスチックバットで打つ。
「やったー!ホームランだー!」
ビーチボールは勢いよく飛んで…管理棟の窓にぶつかった。
「あー!」三人の顔が青くなる。
管理人のおじさんが出てきた。
「おい、君たち!何やってるんだ!」
石川が慌てて走り寄る。
「すみません!弱小野球部の特訓で…」
「野球部?君たち高校生には見えないけど…」
「え、えーっと…浪人生です!」
「浪人生が野球部?」
富山が割って入る。
「すみません!私たちキャンパーなんです。ちょっと変わった遊びをしてまして…」
管理人のおじさんは苦笑いを浮かべる。
「まあ、怪我がなければいいけど…でも他のお客さんの迷惑にならないようにね」
「はい!気をつけます!」
第六章 昼食休憩という名の作戦会議
三人はテーブルを囲んで昼食を取りながら反省会を開いている。
「監督…このままだと甲子園どころか、キャンプ場から追い出されちゃいますよ」千葉が不安そうに言う。
「確かに…もう少し考えて行動しないと」富山も心配顔だ。
石川は唐揚げを頬張りながら考え込む。
「うーん…でも面白くなってきてるじゃないか!みんなも楽しんでるし!」
「楽しんでるって…さっきの管理人さんは困ってましたよ」
「そうそう!それに隣のサイトの人たちも変な目で見てるし…」
しかし、その時、さっきのバーベキューをしていた家族のお父さんが近づいてきた。
「すみません、さっきの野球部の皆さん!」
「はい!」三人が振り返る。
「実は、うちの息子が高校で野球部なんです。今日は家族でキャンプに来てるんですが、息子が皆さんの特訓を見て、自分も混ぜてもらいたいって言ってるんです」
石川の目がキラリと光る。
「本当ですか!?それは願ったり叶ったりだ!」
第七章 新戦力投入で大盛り上がり
息子の健太くん(高校2年生)が仲間に加わった。本物の野球部員だけあって、動きが全然違う。
「えーっと、皆さん何年生ですか?」健太くんが遠慮がちに聞く。
「俺たちは…3年生だ!最後の夏なんだ!」石川が嘘をつく。
千葉が小声でツッコむ。
「石川さん、僕たち28歳ですよ…」
「細かいことは気にするな!」
健太くんが真面目な顔で言う。
「じゃあ、僕が後輩として皆さんに基本を教えますね!」
「え?」
「まず、ボールの握り方から…って、これビーチボールですよね?」
富山が苦笑いする。
「そうなの…道具が限られてて…」
「でも大丈夫です!基本の動きは同じですから!」
健太くんの指導で、三人の動きが見違えるほど良くなった。
第八章 観客が増えていく
いつの間にか、キャンプ場の他の家族連れや若いグループが練習を見に集まってきていた。
「頑張れー!」
「ナイスバッティング!」
応援の声が飛ぶ中、石川はすっかりその気になっている。
「おお!観客がいると燃えるな!これが甲子園の雰囲気か!」
千葉も調子に乗っている。
「僕、初めてホームランっぽいのが打てました!」
富山は相変わらず心配している。
「みんなノリノリだけど…私たちただのキャンパーよ?」
しかし、見ている人たちの楽しそうな笑顔を見ていると、富山も段々楽しくなってきた。
「まあ…たまにはこういうのも悪くないかもね」
第九章 予想外の展開
夕方近くになって、練習もお開きになろうとした時、管理人のおじさんが再び現れた。
「君たち!」
三人がビクッとする。
「また怒られる…」富山が小声でつぶやく。
しかし、おじさんの表情は朝とは違っていた。
「実は、今度の週末にキャンプ場で家族向けのイベントを企画してるんだが…君たちみたいな面白い企画があると盛り上がると思うんだ。どうだい?協力してもらえないか?」
石川が目を輝かせる。
「本当ですか!?喜んで!」
「ただし、ちゃんと安全に配慮してね。今日みたいに窓にボールをぶつけるのはナシだ」
「はい!気をつけます!」
第十章 伝説の始まり
その日の夜、キャンプファイヤーを囲みながら三人は今日を振り返っていた。
「いやー、まさかイベントに呼ばれるとは思わなかったな!」石川が満足そうに言う。
「でも楽しかったです!本当の野球部の気分を味わえました!」千葉も嬉しそうだ。
富山もようやく笑顔になっている。
「確かに…最初はハラハラしたけど、みんなが楽しんでくれて良かったわ」
健太くんのお父さんが差し入れのビールを持ってきた。
「今日はありがとうございました!息子もとても楽しかったって言ってます」
「こちらこそ!健太くんのおかげで本格的な練習ができました!」
キャンプファイヤーの火を見つめながら、石川が呟く。
「なあ、今度は本格的に草野球チーム作ってみないか?」
「え!?」富山と千葉が同時に振り返る。
「キャンプ場を回りながら、各地で野球やるんだよ!『キャンプファイヤーズ』っていうチーム名で!」
千葉が手を叩いて喜ぶ。
「それいいですね!僕、ユニフォームも作っちゃいましょうか!」
富山は苦笑いしながら頭を振る。
「また始まった…でも、まあ悪くないかもね」
炎がパチパチと音を立てる中、三人の新しい冒険が始まろうとしていた。
エピローグ
翌週、キャンプ場のイベントは大成功。「弱小野球部体験コーナー」は子供たちに大人気だった。
そして石川たちの草野球チーム「キャンプファイヤーズ」は、その後各地のキャンプ場で話題となり、いつしか「キャンプ場を回る謎の野球チーム」として密かな有名人になっていく…
「俺達のグレートなキャンプ」の新たな伝説が、こうして始まったのだった。
『俺達のグレートなキャンプ番外編 弱小高校野球部に地獄の特訓(ごっこ遊び)』 海山純平 @umiyama117
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