第3話

いきなり風景が変わり戸惑っていると…

「はぁ疲れた疲れた…」

そう言ってカスミも囲炉裏を囲むように座る。


「ほら、太史もそこに座れ」

シズクからカスミの隣を指を指され促される。


それに従うように履物を脱ぎ、土間からあがりカスミの隣に座った。

「日本出身ということならこっちのが落ち着くだろ?」

「いえ、俺の時代はここまで古くはないのでちょっと落ち着きませんね…」

現代でも使ってる所はあるそうだがこのタイプの家屋が普及していたのは江戸時代だ。


母方も父方の実家も普通の日本家屋だ。

俺は体験したことはなかった。

「「「「えっ?」」」」

全員が驚きの声を上げた。

「以前来た日本人は今はこんな感じだって話して改装したのに」

「以前来たのはいつぐらいなんですか?」

「100年間位前でしたっけ?」

「300年前ですね…」

なるほどそれは古い。

「日本人の来訪は少ないですからねぇ…」

シズクの質問にアイナが答えていた。


「その割には名前は割と新しいですね」

全員の名前は比較的最近の名前のように感じていた。

「以前来た方は静というお名前でしたしそこまで変わってないと思うのですが」

なるほど女性だったか…男性だった場合は〇〇郎とか◯吉とかが多い印象があったが女性であれば納得は出来た。


「でもなぜ日本風なんですか?」

正直家は完全に古民家という感じだが外は南国だ。


「ああ、それは1から説明するね」

そこからシズクの説明があった。


元々この魔族の発祥自体が日本由来らしく魔族の建物はほとんどが日本家屋だそうだ。


そもそも魔族とは動物が人型に変容した種族。

他種族と交配することはできるが生まれてくるのは生んだ種族。


ただ寿命がとんでもなく長い…平均寿命は全員500歳超えという長寿種族。

そして初代魔王の旦那さんが日本人だったそうだ。

魔族の起こりは1000年前でその当時のシズクの祖母が日本人と共に作ったのが今の魔国(まこく)らしい。


その頃の魔族は進化はしててもそれぞれ別部族で暮らしていたそうでまとまりがなかったそうだ。

それを纏めたのが初代魔王と異世界人だった。


各部族をまとめ上げそれはそれは大きな国を作った。

ここに来るまでに全容は見えなかったが島といってもかなりの大きさがあり先端がギリギリ見えるほどの広さが四方に拡がっていたのでかなりの大きさなのは分かっている。


そこからは各部族で共存共栄で国は繁栄していった。

ただ問題もあった。

1つは人口の問題である。

魔族は例外として動物が人間のように変容した生物でありそこまでの数はいない。

寿命も長いおかげもありそこまで生殖を盛んに行う必要はないのだが…生まれてくる子供はほとんど女が生まれてくる。

男が生まれるのは1000人に1人といった具合だ。


2つ目は魔法に関してだ。

魔族は人間とは違い男ではなく女が魔法を使用できる。

しかし魔力の量は胸の大きさに依存する。そのため、人間ほどの魔力はなく人間のように大掛かりな魔法を使用することはできない。

そして男はそもそも魔法を使用することは出来ない。


この2つの理由で基本的には女が戦端に立ち男は家を守る存在として役割分担されている。

この問題を抱えながらも初代魔王と2代目魔王の時代は平和に過ごしていたそうなのだが3代目になってしばらく経ち人間が攻め込んできたそうだ。


「攻め込んで来たのですか?」

「ええ彼らには魔導力軍艦がありますのでそれを使って攻めてきました」

俺が聞いた話だと魔王を悪者のように語っていた記憶があるのだが自ら攻めたとなると話しが変わってくる。


「攻め込む理由は略奪ですか?」

正直な話しをするのであればこちらの国よりも人間の国の方が発展しているように思える。

まだ魔国の中を見た訳では無いが魔王の住まいが古民家となると色々と思う所がある。


「略奪…まぁそれもあるが彼らの目的は男たちだ」


「は?」

金品等ではなく男!?本当に意味がわからなくなってくる。


「人間世界の男の平均寿命は30歳…しかも出生率は年々現象しており男女の比率は8:2位までに開いている」

「つまり…男が早死するから子供を生むことが出来ないと…」

「その通りだ」

「いやいや、そこまでいったらもっと男性に健康的な生活を送らせれば良いじゃないですか」

早死の原因は間違いなくあの巨体だ。

摂取カロリーなどを管理し運動させて痩せされば間違いなく改善する。


「痩せた男に人間の女達は見向きもしないぞ」

「えぇ…」

「彼女達の男に対する判断は身体の大きさだ…やせ細ったものには興味を示さない…」

「じゃあ攫っていってどうするんです?こちらの男性は太ってないんですよね?」

「いや、痩せているだけなら太らせることは出来るだろ?」

「嘘だろ…そこまでするのか」

男がいないなら攫ってくれば良いの精神は共感はしないが理解は出来る。

それを太らせるのは本当にわからない。

「という訳で我が国は侵略を受けている」

「男の補充…さらに一人さらえば何百年に渡って子供を作れるならば尚更という訳か…」

魔族の寿命は長い。

男を一人攫えばその男を使って何人も子供を産ませる事が出来る。

人口現象問題も解決だ。


「しかし、我らも男の数に余裕があるわけではない…あまり生まれない男に加えて私達は妊娠もしにくいだからこそ彼らに男を奪われてしまうと…」

「こちらも存続の危機という訳か…」

「実に悩ましい問題でな…前回の襲撃の際には地の利を活かしなんとか撤退させたのだが…大規模魔術を扱う人間の相手をするのは厳しくてな。こちらから討って出ることも出来ず何度目かの小競り合いの末に人間の国で勇者を召喚するという噂を耳にしてな。その前に先に阻止しようと部隊を出したのだが…」

「間に合わなかったという訳ですね」

「まぁでも異世界人であるそなたが放逐されていて本当に助かった…そなたのような強力な魔力持ちが敵に渡ったと思うと今後の戦いに響くからな」

どうやら勘違いをしているようだ。


「異世界から呼ばれたのは俺ともう一人いまして…」

「えっ!?」

「もう一人は勇者として選ばれたので戦うことになるかと…」

「そのものはそなたよりも強いのか…」

「恐らく…」

体積が魔力量というのなら彼の方が体積は上だ。

その言葉を聞きシズクはそのまま後ろに倒れてしまった。

「シズク!」

そういって受け止めるスズナ。


大変な事に巻き込まれたのを自覚し元の世界に思いを馳せていたのだが…そんな俺を狙っている者がいることをまだ俺は気付いてはいなかった。



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体重=魔力量!?せっかく痩せたのに転移先はデブが最強の世界でした 色蓮 @ginsho0909

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