第2話
かなりの距離を飛び王都がどんどん小さくなる。
異世界に召喚されたと思ったらとんだ災難だ…。
ファーストキスも奪われ清い身体ではなくなってしまった…こんな汚れた俺を彼女は許してくれるだろうか…
そして俺は一体どうなってしまうのだろうか?
彼女に抱えられ上空を飛んでいる身としては抵抗もできない。
なぜなら落とされたら死ぬからだ。
大人しくしているしかない。
まぁ背中に当たる感触は役得かも知れないが…。
「あの~」
「ん?どうしたの?」
まっすぐある方向を見て飛んでいた彼女がこちらを見た。
「俺は一体これからどうなるんでしょう…」
「ああ、悪いことにはならないから安心して。まさかこんな逸材を召喚してたなんてね」
「逸材っていっても俺は城を追い出された身ですよ」
「ああ…まぁ人間の感性だとあなたかなり見た目ひどいもんね」
「そんなになんですか?」
「うーん…人間の感性は難しいから説明できないんだけど…相当ひどいかな~」
「魔族はそんなことないんです?」
「魔族としては超イケメンだね。魔王様直々の命令じゃなければこのまま二人で雲隠れするくらいには」
「それはどうもです…」
こういうストレートに好意を向けられるのは慣れてはいない。
向こうでは身体を覆い隠すように大きめの服をきていたせいもあって家族以外から褒められる事はなかった。
学校でもいじられることはあったが褒められたことはなかった。
「とりあえず魔王様の命令でキミは連れて行かないといけないからさーもうしばらく辛抱して」
すでに王都は豆粒のようになっておりこのままどこまで飛んでいくのか…と思っているとしばらくして海?が見えてきた。
「あれって海ですか?」
「海?ああー魔の海って書いて魔海っていうんだ。異界の知識はあんまりないからこの回答であってるかわかんないけど」
「合ってます。大丈夫です」
「それはよかった。異世界人の資料はほとんど無くてさ~国土的にも人間側の領土で迷い込む事が多くてそうなるとこっちには情報が流れてこないから」
興味深い情報だった。
「こっちに異世界人は結構来るんですか?」
「結構っていっても100年に一人か二人ってとこだけどね…召喚の場合はその限りじゃないんだけど」
「召喚者とは別にってことですか?」
「そうそう、特に召喚の儀式を行った後は繋がりが不安定になるみたいでしばらくしの間は迷い込む人がいるかも」
それははた迷惑な…彼みたいな体型の人間は稀だ。
普通の一般人が迷いこんだらこの世界だと生き辛そうだ。
「それは可哀想ですね…」
「拉致監禁と変わんないからねー」
「魔族側ではやってないんすか?」
「魔族じゃあんな大規模魔術は使えないねー」
先ほど魔法を使っていたように思うのだがあれとは違うということだろうか?
そんな会話をしながらもどうだろうか2時間位たっただろうか…そろそろ抱えられるているのも辛くなってきた。
しかし下は海だ。こんなとこでおろしてもらう訳にはいかない。
「そろそろ休憩とかしませんか?」
「あっごめん、今超調子いいから気付かなかったけど辛い?態勢変えよっか?」
「そうですね…ちょっとつらくなってきました」
「あと少しだからこれでも良い?」
そういって空中で抱っこからお姫様抱っこに切り替えられた。
「これは…」
「ん?なんか問題ある?」
「自分の世界では男性が女性にやる抱き方なので…」
「へぇーそうなんだ。こっちだと女性が男性にやる理想の抱き方って言われてるよー」
「ほぇーでもこっちの男性をこの抱え方するのはなかなかしんどくないですか?」
主に重さ的な意味で。
「男子を抱えられないような女性は情けないって言われる世界だからそんな事はないと思うよ?」
そう言われて先ほど歩いていた女性達はもしかして服で隠れていただけで筋骨隆々だったりするのだろうかと疑問が湧いてくる。
自分の常識とのギャップに狼狽えつつ…なにやら島が見えてきた。
どうやら目的地だったようで降下していく。
「ふぅー到着~行きは3ヶ月くらいかかったのにこんなに早く着くなんて最高!だけどさすがにもうガス欠かな~補充しよ」
そういってまた唇と奪われる…拒否しようにもここは空中暴れる訳にはいかない。
「やっぱり最高だね!」
口を離して彼女はそう口にする…。
また汚されてしまった。
島に到着すると
「こっからは歩かないといけないからついてきて」
「わかりました…」
すでに逃げるという択はなく大人しくついていくしかない…
汚されてしまった唇と手で触りながら彼女の後に続く。
しばらく歩くと城に到着する。
黒を基調とする城はまさに魔王城と呼ぶに相応しい姿をしている。
しかし城はともかくとして周囲は普通の島といっても問題はない感じだ。
まぁどちらかというと南国風といった感じだが。
中に入るとそこは人間側の王城とは違い内装も黒が基調になっており赤い絨毯…ここまで魔王城を再現されていることに驚きを感じている。
しばらく歩いていると大きな扉の前まできた。
恐らくここが玉座の間なのだろう。
「そんなに触って、そんなに気持ちよかった?もう1回する?」
歩いていた彼女がこちらを向くと俺がずっと唇を気にしていたのに気付いていたようでそんな提案をしてくる。
「これ以上すると溢れちゃうかもだけどキミがしたいなら…」
そういって身体を寄せてくる。
「いや!大丈夫です!」
彼女の肩を掴み距離を開ける。
「むーっ仕方ないか、じゃあ今から魔王様に謁見してもらうけど失礼のないようにね」
残念そうな彼女だったが扉に手をあけると扉全体に光が走りゆっくりと扉が開かれた。
そこはまさに魔王城の玉座といった物々しい雰囲気が漂っており身長に歩みを進める。
玉座は上座に設置されており近づいていくとどんどん魔王様の全体像が見えてくる。
「んっ?」
本日2度目の王様との謁見になる訳だが先ほどの大きな王様と比べるとかなり小柄に…いやでかい!?
ある部分が非常にでかい。
狐耳に大きい尻尾が何本も見える。しかしそんな特徴を上回るほどに胸がでかいのだ。
先ほどの彼女もかなりデカかったのだがそれよりもデカく驚きの大きさだった。
魔族はみんなでかいのだろうか…右側に控えている鬼の角のようなものが1本生えている和装の女性が控えている。
左側にいる女性はうさぎのような耳にバニースーツを着ていた。
正直魔王様より先にそちらに目がいったレベルだ。
そのバニーガールの隣にはあれは犬の耳だろうか?垂れた犬耳に服装は白衣といった感じの女性が立っていた。
玉座の間ということで人間の時と同じくたくさんの人がいるのを想像していたのだが…目に見える範囲には4人しか見えなかった。
目の前の彼女に続いて歩を進め王様の御膳で彼女は歩みを止めた。
それに続いてこちらも立ち止まる。
「魔王様…異世界の男性をお連れしました」
そういって深々と頭を下げた。
俺もそれに習い頭を下げる。
「苦しゅうない表をあげよ」
その声色には数時間前に聞いた王様とは比べ物にならないほどの威厳が含まれており緊張しながら顔を上げた。
そして彼女と目があった。
「そなたが異世界から召喚された者か名を聞いても良いか?」
「上杉太史(うえすぎたいし)です」
小さい頃はこの漢字と見た目も合わさってみんなからはフトシと呼ばれていた。
「我の名はシズクと言う3代目の魔王だ」
以外に歴史が浅いと思ったがそもそもこちらの世界と同じ尺度で図る物ではないと思い直す。
「そなたから見て右側がスズナ、左側がマリー、アイナだ。そしてそなたを連れてきたのがカスミという私共々よろしく頼む」
全員の自己紹介を得て和装の女性がスズナ。反応を見るにバニーガールがマリー、犬耳がアイナ。そして俺を拉致ってきたのがカスミというみたいだ。
「日本の名前が多いようですが皆さんは日本に関係があったりするのですか?」
その言葉に全員がおお!というような顔を浮かべる。
「そうか姿に関しては連絡を受けていたがそなたは日本出身かそれなら話は早そうだ。しかしそろそろ魔法の維持も限界だ…」
そうシズクが呟き指を鳴らすと一気に周りの景色が変わる。
「えっ!?」
気付けば自分のいた場所は土間になり魔王様含め皆は囲炉裏を囲っていた。
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