体重=魔力量!?せっかく痩せたのに転移先はデブが最強の世界でした

色蓮

第1話

中学2年の夏俺は、幼なじみに告白した。


しかし、返事は…


「えっ、あー私太ってる人は無理なのごめんね」

そういって立ち去った幼なじみを追うことも出来ない身体にその場に泣き崩れた。



小さい頃に言われた

「フトシくん大きくて好き」という言葉を真に受けて太りに太った111キロ。


確かに中学に入り体重増加は加速し小学校の頃よりも50キロも増加していた。


ぽっちゃりを通り越しどっしりといった表現が正しい。

確かに中学に入った頃から帰りは別々。遊ぶことも無くなったがそれはクラスが離れたからだと思っていた。


あれは彼女が俺を避けていたからだったのか…。


だけど10年思い続けたこの気持ちを諦めることはできなかった。


俺はダイエットを始めた。


そして3年の月日が流れた。


俺は朝昼晩とダイエットというなのトレーニングをした結果。

身長が伸びたせいかあまり体重は減らなかったが三年前とは見違えるほどに痩せた姿がそこにはあった。


別々の高校に進学した俺たちはここ2年ほどは顔を会わすこともなかった。


(しかし今日3年前のリベンジを決め俺は絶対に彼女への告白を成功させてみせる!)


そう意気込み家を出ようとした瞬間、彼女の家の前には3年前の俺をさらにデカくしたような男が立っていた。


その男はあろうことか彼女の家の塀に登り始め中に入ろうとしていた。


「おい!なにをしてるんだ」

そういって止めに入ったその時…突然地面が光り始める


そして意識を失い目が覚めたらそこは…


異国風の建物のここは玉座の間だろうか漫画やアニメなんかで見たことがあるような…いや一部に違和感があるがそのような場所に思えた。


先程掴んでいた男も目の前に倒れていた。


「おお、成功だ」


「勇者よ!よくぞ参られた」


その言葉に目の前に転がっている男も目を覚ましたようだ。


その男は起きた途端

「なんだ、ここは!一体どこだ!」

狼狽えた様子だった。

誰かが慌てていると冷静になれるもので周りの様子を観察する。


先程の声の主はどうやら目の前ので豪華な椅子に座っている者のようだ。


しかしそれは漫画などとは大きく違う、とんでもなく大きな存在が座っていた。


あれは…人なのか?

全盛期の自分を凌ぐ巨大な肉塊に慄きつつ立ち上がり姿勢を整える。


俺が立ち上がると周囲がざわつき始める。


あれが?


貧相な…


そういった声が聞こえる狼狽えていた男も立ち上がる。

そこで一斉に歓声があがった。


おお!あの勇姿こそ!勇者様!


先程から感じていた違和感は確信へと変わっていく。


もしかしてこの世界は…


「勇者よ!まずは突然の呼び出しの非礼を詫びよう」


そう発言し頭を下げる…いや下がってねぇよ!

顔がちょっと動いただけじゃねーか!


よくみたら王様も側にいる男も皆…でかい…


その割には隣に座る女性は美しい姿をしていた。


そこから説明中にも王様は息切れして他の人が説明してまた息切れして変わってと無駄に時間をかけた結果俺たちはどうやら勇者として召喚されたそうだ。


その後、俺たちは検査と称してある部屋へと連れられる。


そこには光り輝く水が溜まった風呂のような物がありそこに入るように促される。


先に俺が入る水が溢れ周りに溜まる。それを見ると周りの女性たちは深い溜息をつく

どうやらがっかりさせてしまったようだ。


そして俺が出た後にもう一人の男が入る。


俺とは比べ物にならないほどの水が溢れ周囲は歓喜に包まれた。

この量り方をするという事は体積が重要なのかもしれない。

体重ということであればあの男とそんなに変わらないと思うのだが…


そして少し待たされたあとまた玉座の間に呼ばれた。


明らかに俺にだけ侮蔑の目を向けられる。


そして王様が口を開いた。

「どうやら今回の勇者様は一人だけのようだ。そちらの人間は勇者ではない!」


そう言われたのはどうやら俺の方だった。


「この世界は、一部の獣を除き男のみ魔法を使うことが出来る。そしてその強さと魔力量は身体の大きさに比例して大きくなる」


先程から予想はしていたがそういうことか…


「年老いた我に代わりに勇者召喚を行ったがまあ、一人は稀代の勇者といって過言ではない。しかもまだ10代とても若い!素晴らしい逸材だ!」


先程待機している間に俺は無視されていたがあちらは色々と話しかけられていた。


「我はもう35…余命幾ばくもない…我の生きている間に魔王討伐を勇者様にはお願いしたい」


そういって皆が頭を下げる。

(男共は下がってないがな!)

勿論俺ではなくもう一人の男へと。


35歳で死にかけ…一体この世界はどうなってるんだ…


俺の嘆きをよそにそこからは話が早く、俺は欠陥勇者として城を追い出された。

せめてもの情だと幾ばくかの金銭を与えられたが勝手に召喚しておいて酷い奴らだ。


出る時に女性兵士がヒソヒソ話をしていたが…やはりこの体型ではこの世界では侮蔑の対象になるようだ。


王城をでて少し歩くと城下町にでた。

町並みは中世?いや近世のヨーロッパといういかにも感じだった。

街を歩いていると、ここでも侮蔑を込めた視線を向けられる。


先ほどの話を総括するとこの世界では大きければ大きいほど魔法をたくさん使用することが出来る。

そのせいか男は太っているほどモテるようでここにいくるまでの女性の視線は以前太っていた時に感じていた視線と似ていた。


そんな俺にいかつい鎧をつけた女性達が声をかけてきた。

「おいおい兄さんそんな身体で大丈夫かよ」

「お姉さんが食わせてやるからちょっと顔かせよ」


なるほど前の世界で言うヤンキーに近いのだろうか?

こっちの世界の価値基準で考えればヒョロガリが身なりの良い格好をして歩いてるようなものでカモだと思われたようだ。


引っ張られるが大人しくついていくほど俺は弱くはない。

「なんだこいつ全然動かねぇ」

「そんな貧相な身体してるのになんでだ!?」


2人に身体を引っ張られるがこの程度の力であれば余裕で抵抗できる。

この筋肉を舐めるな。

彼女を守れるようにと魅せ筋ではなくひたすら鍛え上げた筋肉は伊達ではない。


そんなやりとりを続けていると…

「こらー!お前たち何をしている!」

憲兵のような格好をした女性が遠くから笛をならしながら走ってきていた。


先ほどもそうだったが基本的な労働はほとんど女性がやるようで先ほどから歩いている男性に会うことはなかった。


「ヤベッ」

「逃げろ」


そういって二人は逃げていった。

「君、大丈夫かい?」

二人の女性憲兵は俺の身の心配をしてくれた。

元の世界と比べると女性の身長がかなりでかい。

俺は185cmそれなりに高い方ではあるのだがこちらの女性はみな200mを超えているのか平気でこちらの頭を上から撫でられるレベルだ。

「男性が町中を護衛も連れずに歩くなんて良くないよ」

と注意も受ける。


「護衛?そんなものがいるんですか?」

先ほどから男性の姿がないと思っていたが護衛が必要だなんて俺は聞いていない。


「当然だろ。君は…うーん残念な見た目をしているが貴重な男なんださっきのような連中に拉致監禁されてひどい目にあわされることもあるんだぞ」


とんでもないワードが飛び出した。

そこでハッとする。

男が早死にするということは…相対的に男の数が減る。

そうなると貴重な男というのも納得である。


そんな話を受けていると王城とは逆方向だろうか…そちらの方から人が逃げてきていた。


「魔族だー!」

そんな声が聞こえてくる。


憲兵達も何か連絡を受けたようで

「なに魔族だと!?」

「すぐに向かうぞ!魔法部隊にもすぐ連絡を!」


どうやら耳についてるピアスのようなもので会話をしているようだ。

「君もすぐに避難するんだ…あちらの王城に向かって走れ」

その言葉に逃げようとすると…


突然の状況に反応出来ずにいると空から何かが飛んできた。

「強力な魔力があるのはここか?」

空から降りてきたのはコウモリのような羽の生えた女性だった。

憲兵さんたちと比べると身体が小さく恐らく150cmほどしかなさそうだ。

そして大きな違いは胸…!憲兵さん達はよく言えばスレンダー、悪く言えば凹凸のない体型をしている。しかし目の前の女性は背は低いのに出るとこは出ている。

体型としてはロリ巨乳と呼ばれる類だろう…。

同じ女性でもこんなに違いがあるのか…と観察していると。


目の前に降りてきた女性に剣を抜き向ける憲兵達。

「貴様!こんな所まで侵入するとは!」

「覚悟してもらおう」


「あら?魔法の使えない女が相手になるとでも?」

そういった女性は手から火の玉のようなものを出して牽制する。


「くっ卑怯な…これだから魔族は…」

「ここは私達が食い止めるからキミは逃げるんだ」


そう言われたことで止まっていた足を再び動かす。

「逃さないわ!まさかこんな逸材がいるんてね」

女性が放った火の玉は彼女達の目の前に着弾し彼女達を吹き飛ばした。


そして魔族と呼ばれる女性と俺との間に障害はなくなる。

「一緒に来てもらうわ」


「えっ!?」

爆風のせいで尻もちをついていた俺に魔族は近づき…彼女の口が俺の口を塞いだ

(俺のファーストキス!?)

そんな思いとは裏腹に舌を絡められる。

そして解放され惚けていると…


「なにこの男の魔力…規格外…そうかあなたが異世界からの召喚者…」

女性の身体から目に見えるほどの何かが溢れる。


「今なら王都を壊滅できそうだけど今は、こちらを確保するのが重要ね」

そういって俺の背中に回ると俺を抱える。


「おっも…まぁでもいまのブーストされた状態なら!」

そういって俺を抱えて宙へと浮かぶ。


「一体俺をどうするんだ!」

「安心しなさい。悪いようにはしないから」

そう言われて俺は魔族と呼ばれる女性によって連れ去られることになった。

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