第3話:ユン・セレーネの両親

__新入生歓迎パーティー翌日・7時47分。

魔法学園【アストラ・ロゼ】、女子寮の片隅にて…


「ハァ…昨日はすごい疲れた……」


透き通るような青い瞳。

一本の黒に近い深青のメッシュを含み、

丁寧にハーフツインテールに結ばれたボブヘア。

髪ゴムには悪魔の羽・天使の羽をモチーフの物を…。


本人の魔力が色となり現れるローブと制服を身にまとい、

ふわりとイスに腰掛け、優雅に紅茶を飲んでいる。


彼女は乙女ゲー・『君の光と三本の薔薇』の悪役令嬢、ユン・セレーネである。


「お嬢様、元気がないようですが大丈夫ですか?」


彼女の名前はエミリー・ミッチェル。

学校生活の間、私の身の回りのことをしてくれる…いわゆるメイドだ。


薄い緑のメイド服に、淡い赤色の長い髪を束ねている。


「(淡いとは言えど、目がチカチカするわ…)」

「えぇ…大丈夫よ。少し疲れただけ。」


笑みを浮かべながら、そのようなことを言う。

エミリーは少し心配そうな表情をする。


「お嬢様がそれでいいならいいのですが…」

「そう言えば旦那様から手紙が届きましたよ」


エミリーがその言葉を口にした瞬間、

部屋の空気が凍り付いた。


「…エミリー、笑えない冗談はよしなさい。」

「いえ!冗談じゃありませんよ!」


そういいながらエミリーは一通の手紙を差し出してきた。

鮮やかな水色と一本の深青がいいアクセントになっている封筒…。

間違いない。これは私、ユン・セレーネの父親からの手紙だ。


「…まさかこれを読めとか言い出すわけじゃないでしょうね…?」

「そのまさかですよ、お嬢様。」

「つまり私に死ねと?」

「そんな物騒なこと言わないでくださいよ…」


そんな風にテンポよく(?)会話をしながら

私は封筒を開き、中に入っている手紙を引き出す。

冷たい汗が私の頬をつたる。


「…それじゃあ、読むわよ…」


手紙を開くと魔法性の特殊ペンで書いたのだろうか、

手紙の文字がだんだんと浮き出てくる。

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🌟我が至宝・魔法学園の新星ユン・セレーネちゃんへ💌


今日も元気に魔法を振り回してるかな!?杖は落としてない!?

呪文は間違えてない!?爆発してない!?爆発してたら先生に謝った!?💥🙏


夜ちゃんと眠れてる!?電気はつけた!?ベッドにぬいぐるみは並べた!?

パパ達の写真は枕元に置いてる!?朝ごはんはちゃんと食べた!?👀✨


孤独を感じたらこの手紙を読んで!

でも読みすぎると照れるから破ってもいいよ!保存してもいいよ!

ハグしてもいいよ!でも燃やしちゃダメだよ!

でも額縁に入れてもいいよ!🔥🖼️💖


君が今日も生きてるだけで、魔法界は何億レベルで浄化されてます!!!🌍💫✨


さっき一族の魔導会議で「娘、魔法学園で制服着てるらしい!」って話したら

皆ざわついてたよ!リボンは何色!?スカートはひらひら!?

パパも見たい~!!😫💖💖💖💖💖


最後に!!! 君が笑うたび、パパは魔力が10倍になる!!!


✨ユンちゃん最強最高超絶無敵キューティー爆誇り!!!

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「〈ダークフレイム〉」

「お嬢様ぁぁぁぁぁあ?!?!?!」


そう、ユン・セレーネの父親は親バカなのである。

おまけとしてこういう手紙を定期的に送ってくる。

そして私は手紙を読んだ瞬間思わず魔法で手紙を燃やしてしまった。


「旦那様の手紙が…跡形もなく…」


まるで何かに絶望したかのように

手をわなわなさせながら膝から崩れ落ちるエミリー。


当時の私は『君の光と三本の薔薇』の公式ファンブックをまだ読んでなかった為、

ユンの家庭環境のことをあまり知らなかったが…。


(ユンの)両親は黒髪差別反対派で、私が住んでいた館は別荘で、

別荘に住んでいた理由は、生まれて1週間ほどしてユンが魔力暴走を起こし、

両親が怪我を負ってしまったのが原因らしい。


でもユンは両親から異常なほど愛情を受けており、

お陰様で私が関わる執事やメイドは全員、もれなく黒髪差別反対派である。


「(ほんと…色々揃ってるわ…。)」

「…!……?!」


ちなみにエミリーはひたすら絶句している。

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授業開始時……


この世界で初めての学校、そして教室。

日本な学校とは作りが大違いで、

教壇を囲む様に机が半球状になっている。


だが注目点はそこではない。


「( 完 全 孤 立 ! )」


隣の席はおろか、私の約半径に2m以内の席には誰もいない。

挙句の果てにはひそひそ話をされている。

ここまであからさまに避けられると、さすがに悲しい。


「(別にいいもんね!(泣))」


そんなことを思っていたら…。


「あの…!隣座ってもいいですか…?」


話しかけて来たのはアリシアだった。

彼女は光属性だからだろうか、制服のローブは暖かいホワイトカラーで

ふわふわのピンク色のくせ毛はハーフアップにされており、

所々星モチーフの飾りが施されている。

手には魔導書のようなものを抱えていた。とても可愛い。


「あ、アリシアさん…。別にいいですよ?」


そんな風に言うとアリシアが、

ぱぁぁぁあ! …という効果音が付きそうなほどの明るい笑みを浮かべて、


「ありがとうございます!」


と言いながらうっきうきで私の隣に座る。可愛い。

でも…そんなことより乙女ゲーの王子共3人が

こちらを見てきている事がすごい気になる。


「あ、でもウィリアムズさんとかアルフデットさん

とかに何か言われたりしなかったんですか?」

「私なんかよりあの人たちといる方が楽しいと思いますよ?」


そうアリシアに言うと、きょとん …と顔を傾けて、


「私はユンさんといたいです!」


と、少し頬を膨らませている。


「(小動物か!)」


そんなことをしていたら、

あからさまに魔法を極め続けたであろう女性教師がニコニコしながら

入って教壇の前に立ち、魔導書を広げる。


「皆初めまして!文魔法学ぶんまほうがく担当教師、ロミエ・グランデよ!」


「(ロミオ?)」


この世界での魔法は大きく分けて3種類ある。


魔法…まぁこれはどこの世界でもおなじみのただの魔法だね。


文魔法…これはこの世界観独自のシステムで

魔方陣とかもこの類に含まれる。


技術魔法ぎじゅつまほう…これは実戦での戦略や技術を

さらに極めるために使われる魔法。


そしてそれらの魔法を唯一すべて扱う使うことができた者がいた。

私はそいつの正体を知っている…。


魔王…もとい、"堕落した英雄"……。


「それではまずユン・セレーネさん!」

「魔方陣を書いて魔法を発動させてみてください!」


ロミエが私の名を呼んだ。

気づけばクラス一同の視線は私に向けられていた。


「(マジか…)」


そう思いながら適当に魔方陣を書いた後、

適当にこう唱える。


「水よ、氷よ、結晶となり永遠に輝く星となれ」


そう唱えると魔方陣が発動し、魔方陣から水蒸気と冷気が溢れ出て

天井の側で混ざり合ったと思えば、爆発するように氷柱広がり、結晶となった。


「(こんなでいいか…)」


そう思っているとロミエが肩をわなわな震えさせながら、こう言うつぶやいた。


「魔方陣を自作した…?」

「あ…有り得ない…普通の学生が…」

「レベル100の噂は本当だったの…?」


……あーあ、また注目されてら~…


結局私はずっと注目されながら一限目が終了するのだった…。

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水色大好き腹黒転生者、規格外の強さで魔王と勘違いされる。 珠江 @ao_2046

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