それでも、生きるふりをしている

夏凜

それでも、生きるふりをしている

 今日でバイトをすっぽかしたの、何回目だろう。

 理由なんて、もうわからない。ただ、動けなかった。それだけ。


 大学の夏休みは、気づいたら終わりそうで、何もしてない。やる気も起きない。

 好きなアイドル、日向坂を眺めながら、

「私も、もっと可愛かったら…」なんて、ありえない夢を一瞬だけ見た。

 鏡に映る現実が、すぐにその夢を壊してくる。


 彼氏なんてできそうにない。

「アイドルオタクはモテない」って、ネットで見かけた言葉が頭をよぎる。

 笑えるくらい、外見も内面も「ダブルできつい」らしい。

 皮肉だね、ほんと。


 でも、なんだかんだで生きてる。

 若い時間は今だけだからって、自分に言い聞かせながら。


 就活なんて、まだ考えたくない。

 だから大学院に行こうって、さっき決めた。

 たぶん親には迷惑かけるけど、休学や留年する勇気も、正直ない。


 海外の大学に行きたいって憧れた時期もあった。

 だけど、ただ憧れただけだった。

 英語も人並み。何者にもなれてない。


 働く準備も、気力も、まだ足りない。

 だから今は、小説家として一発当てる妄想でもしながら、ベッドでごろごろしてる。

 ふと見上げた天井に、埃が舞ってるのが見えた。

 部屋、片付けないと。でも今日はいいや。明日やろう。たぶん。


 …それでも、私は優しい人間だと思う。

 ちゃんとそう思える日は、まだ終わってない。



 世界が私を好きじゃなくても、

 せめて私だけは、私を諦めたくない。

 それだけで、今日は少し、生きていていい気がした。

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