番外編3:新婚生活編「騎士団長様の甘やかしが止まりません!」

「エリアナ、顔色が優れないぞ。今日の皇后陛下とのお茶会は、俺から断っておく。いいな、ベッドでゆっくり休むんだ」

「あの、カイ様……。ただ少し、朝の目覚めが悪かっただけなのですが」

「ダメだ。万が一があってはならない」


 シルヴァーナ帝国に来て、カイ様と結婚してからというもの、私の日常は彼の甘やかしとの戦いの連続だった。


 公務で書類仕事に集中していると、いつの間にか背後に立ったカイ様が「目が疲れるだろう」と言って、無理やり休憩させられる。

 庭仕事でハーブの棘が指にチクリと刺さっただけで、「国中の薬師を集めろ!」と騒ぎ出すので、必死で止めなければならなかった。


 過保護。

 その一言に尽きる。

 氷の騎士と恐れられる冷徹な姿はどこへやら。私のこととなると、彼は冷静さを失い、心配性の度が過ぎる甘々な夫へと変貌するのだ。


「カイ様、わたくし、そんなに弱くはございませんわ」

「わかっている。君が誰よりも強いことは、俺が一番よく知っている。だが、俺は君を甘やかしたいんだ。君が今まで背負ってきたものを、これからは俺がすべて背負う。君はただ、俺の腕の中で、笑っていてくれればいい」


 そんなことを真顔で言われてしまっては、こちらも反論のしようがない。彼の不器用で、まっすぐすぎる愛情表現に、私は呆れながらも、結局は顔を赤らめて頷くしかなくなるのだ。


 騎士団の部下たちも、そんな団長の変化に戸惑っているらしい。

 副団長のクラウスさんが、こっそり私に教えてくれた。


「奥様。団長は最近、執務室に奥様の肖像画を飾り、それを見ては頬を緩ませておられます。団員たちの間では『氷の騎士様、春が来たどころか常夏』と噂になっております……」


 それを聞いて、私は顔から火が出そうになった。あのカイ様が、そんなことを!


 でも、夜、二人きりで寝室にいる時が、一番彼の甘やかしが加速する時間だ。

 彼は大きな腕で私をすっぽりと抱きしめ、髪に、額に、頬に、何度もキスを落とす。


「エリアナ……愛している」

「私もですわ、カイ」

「君がいない人生など、もう考えられない」

「ふふ、大げさですわ」

「大げさではない。事実だ。君は俺の太陽で、俺の生きる意味だ」


 囁かれる甘い言葉と、彼の腕の温かさに包まれていると、幸せで胸がいっぱいになる。

 この過保護すぎる夫に、私は一生敵いそうにない。


 でも、それでいい。

 これ以上ないほどの愛情で私を包み込み、甘やかしてくれる。そんな日々が、たまらなく幸せなのだから。


「さあ、エリアナ。もう遅い。今日は一緒にゆっくり眠ろう」

 そう言って、彼は私をベッドへと優しく導く。


 騎士団長様の甘やかしは、どうやらこれからもずっと止まりそうにない。

 そして私は、その甘い罠に、喜んで溺れ続けるのだろう。

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役立たずと婚約破棄されたので辺境で薬草店を開いたら、なぜか『氷の騎士』と恐れられる無愛想な騎士団長様が常連になって、毎日私を甘やかしに来ます 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi

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