作者後記

この度は、「パワードスーツ・クロニクル:鋼鉄の天敵」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。作者として、皆様がタカシやアンナと共に、鋼鉄の巨人たちが駆け抜けた戦場を旅し、その物語の結末を見届けてくださったことに、心からの感謝を捧げます。


初代PSの圧倒的な登場から、その「天敵」であるPSSの誕生、そしてニケという全く異なる脅威の出現まで、そこには、単なる兵器の進化史に留まらない、壮大なドラマの萌芽が秘められていました。私は、この無機質な設定の行間に息づくであろう、人間たちの葛藤と魂の物語を紡ぎ出してみたい、という強い衝動に駆られたのです。



物語の核として据えたのは、「力とは何か」という普遍的な問いです。



初代PSは、まさに絶対的な力の象徴でした。

しかし、その力は、平和をもたらすと同時に、新たな恐怖と、より強大な力を求める欲望を生み出しました。


力は力を呼び、憎しみは憎しみを連鎖させる。


この物語は、そうした「力のインフレーション」が、いかに人々を、そして世界を翻弄していくかを描く試みでもありました。


主人公のタカシ・ミヤザワは、その「力」の光と影を、誰よりも深く知る人物として設定しました。彼はかつて力の頂点にいたエースパイロットでありながら、その力によって多くを失った男です。


だからこそ、彼は単なる英雄ではなく、常に自らの行動の意味を問い、力の行使に苦悩し続ける、一人の人間として描きたかったのです。彼の流した「鋼鉄の涙」は、この物語のテーマそのものを象徴しています。


もう一人の主人公であるアンナ・リンドバーグは、タカシとは対照的に、戦いを知らない純粋な魂として登場します。

彼女は、師であるペンフィールド博士の理想と技術を受け継ぎ、平和への強い願いから、自ら戦場へと身を投じます。

彼女の悲劇的な結末は、たとえ高潔な理想のためであったとしても、強大な力に手を染めることの危険性と、そのあまりにも重い代償を示唆しています。


彼女の存在なくして、この物語はこれほど切ない響きを持つことはなかったでしょう。


そして、敵役であるシュタイナーとS.Y。

彼らは、単なる悪の化身ではありません。

彼らもまた、それぞれの信じる「正義」と「秩序」のために戦っていました。


特に、元は一人の人間であったペンフィールドとシュタイナーの相克は、人間という存在が内包する、創造と破壊、理想と狂気という、二面性の葛藤そのものを描いたつもりです。


この物語を書き終えた今、改めて思います。


私たちが生きる現実の世界もまた、絶え間ない技術の進化と、それを使う人間の倫理との間で、常に揺れ動いています。

AI、遺伝子工学、そして新たな兵器…。


私たちは、日々、新しい「パワードスーツ」をその手にしているのかもしれません。


この物語が、読者の皆様にとって、単なる空想科学小説としてだけでなく、私たちの未来について、そして「力」との向き合い方について、ほんの少しでも思いを馳せるきっかけとなれたなら、作者として、これに勝る喜びはありません。


最後になりましたが、この壮大な物語の源泉となった、素晴らしい資料を提供してくださった先人達に、改めて深く感謝申し上げます。


そして何より、この長い旅路にお付き合いくださった、全ての読者の皆様に、心からの拍手を。


また、いつか、別の空の下で、新たな物語と共にお会いできることを願って。


[宇宙大輔]

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