最終話 これは私の妄想です
最後に、なぜ私がこうして地元についての文章を綴ってきたのか──その理由を、お話しさせてください。
これまでお話ししてきたように、私の実家の裏山にはいくつかのお墓があり、標高が高くなるほど古く、形も簡素になっていきます。
そのいちばん上にあるお墓は、名前も刻まれておらず、自然石がひとつ、静かに置かれているだけのものでした。
こうしたお墓の形式は、いわゆる「隠れキリシタン」の墓に見られる特徴のひとつだといいます。
祈るときだけ十字架の形に石を並べ、祈りが終わると元に戻す。証拠を残さないために、自然石を用いる──。
私は、このいちばん上のお墓が、私たち家族のものではないのではないか、と考えています。
もっと言えば、そこは今なお“使われている”のではないか、と。
あの墓の周辺では、子どもたちが「人魂を見た」と話していたことがありましたね。
人魂というのは、迷信のようでいて、実は科学的に説明がつく現象でもあります。
土葬された遺体から発生したリンが空気中で発光する──そんな現象は、現代の火葬文化ではまず見られません。
けれど、もしあの場所で、今でも“誰か”が土葬されているとしたら?
山の中にある、無数の小さな洞窟。
そこにはまだ隠れているのです。
彼らは、かつての迫害を逃れてこの山に身を潜めた人々の末裔。
その文化と信仰を守りながら、ひっそりと現代まで生き延びてきた。
そして、誰かが亡くなるたび、キリスト教の伝統的なやり方──すなわち「土葬」で埋葬してきたのではないでしょうか。
イノシシが掘っていたのは、芋ではなかったのかもしれません。
彼らが掘り返したものの“かけら”・・・。
それが斜面を転がり落ち、夜、私の部屋の壁に、コツ、コツと当たっていたとしたら──。
……もちろん、これはあくまで私の妄想です。
けれど、この静かな山の中には、まだ誰にも知られていない“何か”が、確かに息づいているような気がしてならないのです。
私の地元を紹介します スタシスホメオ @homeostasis19920624
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