第26話 魔王

マオ「またここに来ちまったなぁ。」


ターマ「すぐに戻りますよ。アナタは。」


マオとターマは真っ白な空間にいた。マオはターマの手を握りその体を抱き寄せた。


マオ「……ずっと、ここにいたい。こうしていたい。」


ターマ「私はアナタに常に抱かれてる。いつも側にいますから。」


マオはターマの顔を見た。


マオ「俺はまだ生きないと行けないのかい?」


ターマ「アナタがそれを望んでるんですよ。正確にはアナタの無意識。キーリスを倒したい。人間達をまた管理したい。って。ずっとさけんでますよ?」


マオ「君には聞こえてるの?」


ターマ「はい。」


ターマは少し離れてマオに言った。


ターマ「マオの望みを全部叶えたらここで暮らしましょう。」


マオ「そうしよう。」


マオは笑顔で答えた。




マオは目覚めた。


マカル返しの再生するまでの時間は以前より長くなっていた。マオは自分の歪んだ手を見つめた。


マオ『もう、そんな気軽に死ねないのかな?』


気がつけば、日はすっかり落ちて夜空に月が出ていた。


マオ「久しぶりに見たなぁ。月。アソコにあるのがいいよ、やっぱり。」


マオが起き上がると、キーリスの方を見た。


その体は吹き飛んだままで、残ってるのは足だけだ。


マカル返しで飛び散った肉片がモゾモゾしてると思ったのに。


マオ「あれ?マカル返しが発動してない……」


どうして?


その疑問に脳内のターマが答えた。


ターマ「マカル返しを放棄したんですかね?この世に未練がないとか?」


マオ『確かに、この状態の世界で生き返ってもなぁ。』


天空神殿はイギギや亜人の死体の山だ。


生きてるのはもう、マオくらいしか居ない。


建屋もほとんど崩壊していて、神殿の土台が天空に浮いてるのが不思議なくらいだった。

これじゃ好きな遺伝子工学の研究もできないだろう。


マオが地上に降りようと転送装置に向かっていると、後ろの空に赤い杭が地上に降ってくるのが見えた。


ゴァァ!


マオ「何だアレ?」


赤い杭は地上に深々と刺さった。その時、マオにはそれが何なのか見当もつかなかった。




議長「空母の艦長に感謝する。」


艦主の巨大モニターの男に敬礼する。その時、オペレーターが議会から緊急の連絡を受け取った。


オペレーターA「議会から報告。エルヨウンの資源回収は中止、当星は禁足地とする。」


議長「まぁ、仕方ないだろうな。全艦、母星に帰るぞ。ワープ用意。目的地は母星軌道上。」


オペレーターA「よって、気象兵器を使用し封印する。」


議長「え?今からアレを打ち込むのか?」


議長の乗った船から赤い杭が星に向けて射出された。


赤い杭、アマノヌホコ。


命令を入力し、星に打ち込んで、地殻の移動や気象を操作するアヌが所有するコトダマの神器。


入力するメは「セ"ンキユウトウケツ。」




マオが地上に降りてみると気温が下がっているのか水の引いた地上は霜が出ていた。


マオ「さっむ!」


ターマ「どうしたんでしょう?このあたりは一年中、温暖でしたけど……」


生き残った亜人やゴブリン達が聖地に戻って来ていた。


ゴブリン「あ、マオ様!」


マオを見つけると、そこにいた亜人達はマオに助けを求めた。


ゴブリン「どんどん気温が下がってる!どうしたらいいんだ!?俺たち!」


オーク「寒い!死んじゃう!」


マオはしばし考え込んだ。


マオ「そうだ!巨人の製造施設が生きてないかな?アソコなら暖を取れるかもしれない。」


マオの読み通り巨人製造施設は電源がまだ生きており、当分そこで暮らせそうだった。


ターマ「気温が落ち着いたら、生存に適した場所、農耕ができる場所を探しましょう。」


マオ『それまでは、帝釈天(アニキ)流の人口統制をして人口コントロールをしないとなぁ。ゴブリンの頭数管理はオークのメスで行けるかな?』


人間が全く居ない。そうなると、ゴブリンの種が絶えてしまう。


マオはオークでその代用ができるか試したが、普通の子も生まれるには生まれたが、奇形が多く発生した。

しかし、そうするしか方法がない。

生まれた奇形はすぐに、オーク達の食料となった。




数十年後、

だいぶ気温が上がり、マオ達は外に調査隊を派遣した。

待つこと数カ月、その一団が血相を変えて帰ってきた。皆ボロボロで、あるものは矢傷や刀傷がある。


調査隊のゴブリン「人間共がめちゃくちゃ増えてます!」


調査隊の亜人「しかもすごく凶暴で、話も聞きません!」


星の急激な寒冷化で、そのほとんどの種が絶滅した中、まだ温暖な地域にいた人間達がマオ達が居ないこの数十年後で爆増していたのだ。


マオ「奴ら、牧場を逃げた奴らの生き残りか?」


ターマ「とりあえず、配下に戻るよう特使を送ってみては?アレ(人間)も我らの財産ですし。」


マオ『そうだな。土地も開拓してるみたいだし、食糧問題も解決できるかもしれん。』


しかし、戻ってきた返事は特使にしたゴブリンの首だった。


特使の連れは震える手で人間達の返答文を読み上げた。


特使団「読み上げます。魔王の手から我々、人間は解放された。戻るつもりも土地を明け渡すつもりもない。」


コレにマオは怒った。


マオ「家畜の分際でぇ、よーし!いいだろう!抵抗するものは容赦するな!女子供は牧場に連行して、女はゴブリンの苗床にして、子供はマンパワーにしよう。」


こうして、その後の長きにわたる、魔王と人間の戦いは始まった。


しかし、それはまた別のお話。


     ーおわりー




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魔王ビギニング 超絶不謹慎作家コウキシン @k0uk1s1n

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