メッシュな僕とブラックな君
功琉偉つばさ
メッシュな僕とブラックな君
髪を染めた。これは、僕にとってのちょっとした大事件だった。
3年間続けてきたバスケ部を引退してから2週間後、思い切って、友達にも誰も言わずに髪を染めた。
僕の高校は髪染めるのOKで、周りに染めている人は結構居たが、それでも部活に所属している間はスポーツマンシップとか、そういった感じで染めていなかった。別に禁止されているわけではなかったが、礼儀みたいな感じだった。
そして、3年間の青春を終わらせてきたこの日、高校生最後の夏が終わるこの日、僕は新しい一歩を踏み出した。
受験があるから高校生はこれが最初で最後。そこで、金髪にするか、はたまた違う髪色にするか悩んだが、最終的にメッシュにブリーチすることにした。
◇◆◇
翌日、僕はいつもより帽子を深めに被って学校に行った。もちろん、誰にも言っていない。少し気になっているあの子にも。
張り切りすぎて、一番乗りに教室についた。なんだか、手持ち無沙汰でわざとらしく帽子を脱いだまま適当に勉強していた。
すると、あの子がやってきた。いつも朝一番にやってきているらしいあの子。真っ黒のきれいな髪のあの子。
「おはよう」
髪に気づかれるかな? と思いながら、内心ドキドキしながら挨拶する。
「おはよう」
あれ? それだけ? 何も言われない?
そのまま、僕の右斜め前の席に座った。
あれ? そんなに違和感ないのかな? あれ、ちゃんと、染めたよな?
僕はなんだか不安になって、トイレに向かった。廊下に出ても、人は全然居ない。今は7時50分。人がまばらに登校してきている時間帯だ。
バスケ部の面々は⋯⋯ まだ来ていないだろう。あいつらは部活を引退してからなんか、遅刻ギリギリに来ている。だから変に茶化される心配もない。
トイレの鏡で、髪を見てみる。うん、しっかり色抜けている。ちゃんと金色だ。こうやって自分を客観的に見てみると、また自分に違った印象を持てる。
うん、今日の僕、結構イケてるんじゃない?
そうして教室に戻っていく。
教室ではいつものルーティーンなのか、あの子はヘッドホンをしながら勉強していた。結局気づかれなかったか……
そうして、僕はメッシュは失敗に終わったと思って、ヤケクソで適当に普段はやりもしない問題集を解いた。
そして、そのまま結構集中してて、チャイムが鳴ってあたりを見回すと、周りには人がいっぱいいた。でも、誰にも髪のことは言われない。
僕って影薄いのかなぁ……
そして、朝のホームルームが終わり、1時間目は古典というところで、後ろのロッカーに教科書を取りに行こうとしたとき後ろから、
「メッシュにしたんだ。結構いいじゃん」
と、声をかけられた。一瞬、誰に話しかけられたかわかんなくて、びっくりしたが、後ろを振り向いてみると、きれいな真っ黒い髪が翻っているのが見えた。
もしかして……
授業が始まり、一気に時間が進んでいく。ちょうど、古典で、扇の広げたるような…… っていうフレーズが出てきた。
右斜め前の席を見たら、きれいな黒い髪が揺れ、僕とあの子の目があった。
メッシュな僕とブラックな君 功琉偉つばさ @Wing961
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