第13話『俺はノンデリです』
時刻は午後1時。
昼食を取り終え、次に向かう行き先を考える。
集合時間は午後3時なので、あと2時間で回れる計画を立てる。
事前に周辺に何があるのか確認していたので、計画を練るのに時間はそう掛からなかった。
「よし。次行くぞ」
「……」
声を掛けると、藍田萌香は無言で席を立つ。
どうやら先程からかったせいでお姫様の機嫌を損ねてしまったらしい。
食事中に何度か話し掛けたが、素っ気ない返事を返された。
このお姫様は、結構根に持つタイプの女かもしれないな。
「それで、次はどこに行くのよ」
「食べ歩き出来るとこに行く」
「さっきお昼ご飯食べたばかりよね?」
「食べ歩きって言っても飯じゃない」
「ならなによ」
「食後のデザートだ」
腹は満たされているが、デザートは別腹だ。
ネットで調べたところ、近くに和菓子中心の食べ歩きスポットがあり、観光客も結構訪れる人気の場所だ。
綺麗な景色を見たり歴史的建造物に触れたりと、行く先の候補は色々あったが、女子はそういうとこより甘い物を食べる方が好きな傾向にある。(俺調べ)
なので、種類が多く自由に回れる食べ歩きにした。こんなに女子に配慮出来る俺って、紳士な男だな。
「考えてもらって悪いのだけれど、食べ歩きは出来ないわ」
「どうしてだよ。まさか甘い物が苦手なのか?」
「そうじゃないけど……私、糖質制限してるのよ」
「糖質……制限……?」
あれ、なんか嫌な感じがするな。
糖質制限とは名前の通り、糖質の摂取を制限すること。
遠回しに言ってくれているが、直接的に言うとこれは………ダイエットか!?
女子は男子より太りやすいと耳にしたことがある。そのため女子は、日頃から摂取カロリーを気にしている。
そして、遠回しではあるが『ダイエット』というワード。
つまり藍田萌香は今、太っているということ……。
太っていると言っても、それは以前より体重が増したということであり、BMIの数値が肥満度(1度)まで達しているわけではない。なんなら藍田萌香は痩せている。
だが女子にとって、少しでも体重が増してしまうのは致命的であり、精神的にも深い傷を負う。
そして俺は今、さらに傷を抉るような行動を薦めている。
「そういうことなら仕方がないな。少し待ってくれ、別のプランを考える。(はあ……)」
額に手を当て、息を漏らす。
知らなかったとはいえ、そういうのも考慮すべきだった。
はは。絶対俺のこと、ノンデリ人間だと思ってるよな。
「……あなた、なにか勘違いしていない?」
別の行き先を考えていると、藍田萌香がそんなことを言ってくる。
勘違いなわけないだろ。どう考えても俺が失態を犯した、それだけだ。
「私別に、ダイエットなんかしていないわよ?」
「そうかそうか、ダイエットしていな──え? ダイエットしてないの?」
「してないわよ」
「ならどうして……」
「言葉通り、糖質制限してるからよ」
『◆◇◆◇』
久方ぶりに、モーターが高速回転する。
一般の人が糖質制限する理由は大体がダイエットや、太りたくない、と言った理由だろう。
だがアスリートなどは常に体型維持が求められ、競技によっては数グラム変わるだけでもパフォーマンスに影響が出たりもする。
そして、藍田萌香は女子サッカー部に所属しており、1年生ながらもレギュラーの地位を確立している……。
「まさか、日常的に糖質制限してるのか?」
「当たり前よ」
「でも、食べたくなったらどうするだよ」
「そういう時はフルーツを食べるか、我慢しているわ」
「プロでも目指してんのか?」
「目指していないわ」
女子高生ですよね?
運動部とはいえ、フルーツ以外で糖分を摂取しない女子とかいるのかよ。しかも、プロになる気もないみてえだし。
「良くそんなことが出来るな。俺だったら1日も持たねえよ」
「でしょうね」
「おい……」
好き放題言いやがって。
いくら俺でも1日ぐらいは持つわ!
「それで、次の目的地は決まったの?」
「いやまだだ、もう少し待ってくれ」
食べ歩きが出来ないのなら、やはり景色や建造物が見れるとこしかないよな?
でも2時間で回るとなると、ギリギリ二つ回れるか回れないかぐらいだな。
「チラッ…」
「……」
一瞬横に目線を逸らすと、お姫様が腕を組んでぼーっと突っ立ていた。
何もしないなら調べてほしいのですが。(この、他力本願女め!)
「他力本願じゃないから。それはあなたの役目だから」
「!? し、知ってるってそれぐらい……」
毎度毎度、どうやって俺の心を読んでるんだよ!やっぱ超能力者だろコイツ。
それから数分後、次の目的地が中々決まらず携帯とにらめっこしていると……
「おー聡仁! こんなとこで何やってんだよ」
「どうもしてねえよ」
「あれ、水城の班って2人だけなの?」
「そうだ」
偶然にも、凌空達の班と出くわす。
「あれ、藍田さんって水城くんと2人なの?」
「そうだけど……」
「ならうちの班にこれば良かったのに~」
「バカねゆきピーは。それだと、この中から1人排除しないといけないじゃない」
「舞香の言う通りだわ。なら今から凌空くん排除して藍田さん入れる?」
「なんでオレなんだよ! てか言い方酷くね?」
つくづく思う。
俺はどうしてこんな陽キャな奴と親友をしているのかと。
凌空の班は男子4人と女子2人で構成されており、全員がクラスカーストトップに君臨している。
正直言って、今すぐにでもここから離れたい。こんなとこに長時間居たら精神が崩壊しそうだ。
「聡仁達は次どこ行くんだ?」
「それを今考えてる」
「ならオレらと一緒に行動しね?」
「でも……」
「みんな良いよな?」
「うちらは全然オッケー」
「おれらもだ」
どうやらハッピーヒューマン達は俺らを歓迎してるみたいだ。
普通に拒んでほしかったんですけど。
まあ、凌空がいるから俺は良いけど……
「お前は良いのか? 凌空達と一緒に行動しても」
「……良いわよ」
「本当に良いのか?」
「良いって言ってるでしょ!」
強い口調で返される。
喋れる奴がいるのか知らねえけど、本人がそう言ってるなら良いか。
「凌空達はどこ行く予定だったんだよ」
「さあな」
「どういうことだよ、それ」
「何も決めてないってことだ」
「大丈夫なのか?」
「楽しかったらそれで良いんだよ!」
絵に描いたようなハッピーヒューマンだな。
こういう奴が、人生勝ち組になるんだろうが。
それから俺達8人は、行く当ても決めず足を進めた。
☆☆☆
『昨日のあれ見た?』
『見た見た! めっちゃ面白かったよね!』
『次の休みどっか行かね?』
『良いなそれ!』
「……」
皆が談笑している中、俺の知らないところでその様子を眺めているお姫様がいた。
まるで輪に馴染めず、自分が除け者にされているみたいに……。
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