第三章 ゴブリンと人間の邂逅の話

第27話 休日最高

 ああああああッ!!!


 なんで!?どうしてこうなった!?


 顔のすぐそばを、槍が空気を裂いて突き抜ける。


 頬に熱い痛み。避けれてなかった。


「……攻撃をやめろ!!僕は元人間だッ!」


 男の動きが止まる。その顔は狂気の笑みに満ちている。


「いやぁ~、おもしれぇ。こんな魔物に会えるなんて、依頼は無駄じゃなかった。まさか、人語を話し、俺をたばかろうとするゴブリンなんかがいるとはなぁっ!」


 駄目だ!まったく信じてくれない!


 ……ほんとに、どうしてこうなったっ!?


 ディー、助けてえええぇぇぇ!!





 ✾ ✾ ✾

邂逅、前日


 ふんふんふん~♪ふふんふふ~♪


 いや~、何もない日ってなんでこんなに幸せなんだろう?


 誰か共感してくれる人いないかな?休日で、特に塾がない日とかめっちゃ幸せじゃない?


 


 ……まぁ、この世界では塾なんてないけど。ていうか、僕の『完全ニート化計画』が全然進まない。




――――根喰い虫め、許すまじ。


 おかげで、作ったばかりの新集落は崩壊。新しく作り直すことになった。


 それに、根喰い虫との戦いだけで4話も取りやがって。凶兎キョウトなんて28行で終わったのに……。




 ……ん?


 今、なんか変な思念が混ざったような……。ま、気のせいか。


 とりあえず、今日の予定をたてよう。ゴブリンたちは集落を建設中、ディーと角ゴブはそれの総指揮を執っている。


 僕は……当たり前だが、やることがない。ん~、泉で水浴びでもするか。


 早速、泉に移動。すれ違うゴブリンたちは、当たり前のように僕に跪いてくる。確かにさ、根喰い虫との戦いでは大活躍だったよ?


 だけどさ、戦っていたのトレントさんとディーだよね。……あ、トレントさんが別集落の人も戦っていたって言ってたか。


 いや、そうじゃなくて、僕って火をかけただけだよね。なんで、こんなMVPみたいな扱い受けてんの?あああ~、なんで気絶しちゃったんだろ。勝敗をしっかり見てたら秘密が分かったかもしれないのに。




 ✾ ✾ ✾


 はい。泉に着きましたね。


 僕は身を乗り出して、泉を眺める。


「ふわあぁ~」


 思わず、感嘆の息がもれる。

 澄み切っていて、底が見える。めっちゃ綺麗。


 これほんとに、なんなんだろ?



 気絶から復活した時に、気が付いたらあった泉。事情を知っていそうなトレントさんに聞いても教えてくれないし。


 ……まぁ、無害だってことだけは教えてもらえたから、気にせずに使ってるんだけど。どこかから湧き出しているわけでもないのに、気が付いたら元の水量に戻ってる不思議泉。めっちゃ便利です。


 



『魔王様ぁ~?』


 トレントさんの念話は本当に心臓に悪い。

 だから、突然話しかけないでほしいのだが……


『おう、すまぬすまぬ。ちょっと、頼みがあってのぉ』


 はいはい、何ですか?


『根喰い虫の魔石を回収してくれぬか?』


 ……と、言うと?


『わしがどこかに埋めた、根喰い虫の死骸を探してきてくれぬか?』




 ……ふぁ?


 え?根喰い虫どこいったのかな、とは思ったけどトレントさんが埋めたの!?


 ていうか、忘れたの!?


『いや~、正直わしも気絶からの復帰直後じゃったから。地下の方の根喰い虫を回収しようと急いで動かしておったら……』


 ときどき、トレントさん大ポカすんなぁ。ていうか、魔石を回収って燃やせばいいの?


 思い出すのは、ホーンラビットの丸焼きを作っていた時。あぁ、思い出したら無性に肉食べたくなってきた。



――――根喰い虫って食べれないよね?


『なんと、魔王様はそこまでストレスが溜まっていたか。精神が崩壊するなんて、可哀想に……』


 いや、冗談だから。会話に飢えてるの。分かる?


『おぅ、正常じゃったか。じゃあ、よろしく頼む。たぶん木を目印にしたはずじゃから……』


 何に使うのかは知りませんが、一応集めますよっと。


『頑張ってくれよ~。わしがんじゃからな~』





――――食欲だったんかい。






――――――――――――――――――――

第三章が始まりました!


ちょっとだけ、ギャグが主導権を取り戻したんじゃないですか?


さて、根喰い虫の死骸を探しに行く主ゴブ。


何事もなく終わったらいいな~

 ↑

〔章タイトル読めよ〕




失礼しました。気が付かない間に人格が分裂して……


次回、主ゴブに苦難が襲い掛かる!?

ぜひ読んでね!

                丸兎

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