第25話:帰郷、そして新たな商売へ

長い旅路を経て、ミツルとジャンクはついに地元へ戻ってきた。


懐かしい街並み、見慣れた屋敷の門をくぐると――


「……おかえりなさいませ、坊ちゃま!」


「お兄ちゃん!」


「にいさま!」


玄関先で駆け寄ってきたのは、元気いっぱいの弟と妹。


以前よりも活気にあふれた屋敷には笑い声が響き渡っている。


かつて教会からの重圧に苦しんでいた実家も、今では金銭的に余裕が生まれ、使用人たちの表情も明るい。


その様子を少し離れた場所から眺めていたジャンクは、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。


「……そろそろお別れか……。」


長い旅を共にしたミツルが、ここで落ち着いて暮らすのなら――そんなことを思いながら感傷に浸っていたときだった。


「……お、ジャンクじゃん!」


「坊っちゃん!?実家に帰るんじゃなかったのか?」


ひょっこり現れたミツルが、いつもの調子で肩を叩く。


「いやいや、商人は続けるよ?こんなに楽しいこと、他にはないからさ!」


ジャンクは思わず吹き出す。


「ははっ……相変わらずだな、坊っちゃん。」


ミツルはにやりと笑い、大量の安物クッキーを抱えていた。


「さ、久しぶりに豪遊しようぜ!」


【収納スペース】にクッキーを次々と入れていき、【プラスアルファ】を発動させる。


瞬く間に、香ばしくてサクフワな最高級クッキーが山のように積み上がった。


「うおぉ……!」


「坊ちゃま、すごい!」


使用人たちや町の人たちに試作品として配って回るミツル。


子どもたちが笑顔でクッキーをかじり、大人たちはその味に目を見張る。


ジャンクはそれを見て、深く息を吐き、満足げに頷いた。


「……ははっ!ちげぇねぇ!」


そして彼もまたその輪の中に加わり、新しい商売の話を始めるのだった。


「なあ坊っちゃん、次はどんな商品を……。」


「もちろん、もっと楽しいものを考えるさ!」


夕焼けに染まる屋敷の庭で、二人の笑い声が響き渡る。


旅の終わり、そして新たな始まり。


お貴族さま+α 完

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お貴族さま+α @fuu349ari

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