第3話 夏が始まる②
時はさかのぼって再び先ほどの公園に戻る。
放課後の公園といっても集まるのは小学生児童や鳩ばかりではない。近くの高校に通う一部の生徒、特にカップル御用達だったりする。
「まったく、学生の本分は学問だというのに放課後の貴重な時間をこんなところで浪費するのが一体今後の人生にどれほどの悪影響を及ぼすのか。彼らにはまずそういった計画性を持ってもらってからだな……」
「いやいや、そんなこといながら意中の女子追っかけ回しているあんたも大概やばいっていうか、もう危険度合いで言ったらヤバさは勝ってるわよ。てかこのアンパンは何?」
「おいおい水無瀬刑事、張り込みは初めてかい?」
「これは張り込みじゃなくてただのスト―……」
「シッ、ベンチに座るぞ!」
公園の縁、大きな樹の下にあるベンチの下に一組の男女ペアが腰かけるのを遊具の中にいた二人は目視した。この不審な法の男女ペアはお気づきの通りカップルではない。水無瀬と呼ばれた女子高生に言わせると「ニュートラルに言えば腐れ縁、よく言えば金魚とフン」らしい。
「ところで水無瀬君、先ほどからずっと文句を言ってる割にはちゃんとついてきてくれているのはどういうことか説明してくれるかな?もしかして君も喜多川さんが気になっているとか?」
「なんでそこで気になるのが花蓮ちゃんの方なのよ!!!!……て、てか、こんなに近くに私がずっといるのに取られるとか心配はしないワケッ?胸は確かに著と小さいけど、太ももとかお尻なら……」
「え?なんて言った?もも?焼き鳥の話?」
「あーもう、うっさいわね!この臆病うんこオブ金魚のくせに!このバカ蓮司!!ちゃんと見ていないと花蓮ちゃんまたどっか行っちゃうよ!」
「うんこオブ金魚って……どっちかっていうと付いて来てるのは毎回そっちなんじゃ……」
「なんでっ!そういうとこだけツッコミがっ、鋭いのーよっ!」
遊具の中で水無瀬の蹴りが男の尻目掛けて炸裂する。
クリティカル費としたローファーの痛みに悶える蓮司を横目に水無瀬里香は驚くべき光景を目の当たりにしていた。
「ね、ねぇ、蓮司……」
「……ん?な、なんだ?こっちはいま下半身が大惨事なんだが!?」
「あの、今はそのまま下向いていた方がいいかもしれないわ」
「……それってどういう?」
時すでに遅し。蓮司はベンチの二人がただの男女の友達同士ではありえないほどに顔を近づけあっている光景を視界のど真ん中に入れてしまっていたのだから。
「へ……?」
夕日のさす湯具の中では、あちゃー、とでも言いたげに右手で目のあたりを覆う水無瀬と呆然と遊具の外を見つめる蓮司が世界から隔離されたように各々絶望しているように見えた。
この美少女幼馴染はただの教育係です!!! 手垢 @teakaboo
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