私あなたに嫁ぎます
あの熱いバトルから何時間が経過したのか、オーリウスはそんな事を考えていた。場所は寮内のキッチン。王使を自分が持っている事がにわかに信じがたいが、どうやら夢ではないらしい。
「まったく、王使様の隣に座るなんて感激だわん」
「本当っす。なんかこう王使って感じっすね」
「なに言ってるの。オーリはオーリでいいんじゃない」
四人でキッチンのテーブルでお茶を飲みながらそんな話をしていた。照れるオーリウスだが、頭を掻いた瞬間、ピンポンという呼び鈴の音が鳴り響いた。
そう言えば今日寮生が増えるらしい。こんな季節外れの時期に誰かと思うが、カンタレラは内緒と色っぽい仕草でいうのを見て、オーリウス達は怪しいな、なんだろうなと訝しんだぐらいだ。
「はいはいー」
カンタレラはテーブルの席から立ち上がると玄関へと小走りで歩んでいく。一瞬歩んでいくカンタレラがオーリウスに対して甘い笑みを漏らしたが、なんの事だろうと再度オーリウスは小首を傾げるしかなった。
「だろうだろうね。オーリウス君」
「いや本当に誰だろう」
「こう、私の男心をくすぐる子がいいわん」
三人で誰だろうとやや楽しむように会話をしていたのだが、そんなオーリウスの背後からふんわりと誰かが抱きついてくる。甘い吐息に服越しからで分かる柔らかな体。
「? え?」
「ふぇ?」
「お、オーリウス氏」
オーリウスの対面に座っていたキャルタンが顔をひくひくと引き付かせながら背後へのけぞりそうになる。キャメロットはオーリウスの隣に座っているために、状況が分からずなにがなんだか分からない。
「オーリウスさん」
「は、はい」
オーリウスが背後を振り返ると、あったのはセミロングの髪のサイドにリボンを巻いたアメノの顔。
とても色っぽく、そして甘い吐息がオーリウスの耳にかかる。そんなオーリウスの手前にカンタレラが戻ってくると、手を少し上げると困ったポーズをする。
「いやさー、アメノの家にはさ家訓があってさー、自分を納得させた男性の家にさー」
「さー?」
「嫁ぐ習慣があるのね」
「……へ?」
カンタレラは棒読みの状態で少しへらへらとした笑みを浮かべながら、オーリウスにそう言うと、オーリウスは真抜けた声を出しながら席から立ち上がる。
「ま、まじで。この男キャルタンが一番萌える展開だわ」
「むうー」
キャルタンは手を胸の前で置くとガッツポーズをするが、キャメロットはなぜか頬を膨らませてむっとした表情をする。
オーリウスはばっと背後に振り返ると、リ、リボンをしたんだとアメノに言おうとしてその姿に見とれてしまう。
アメノは青を基調とした色鮮やかな着物を着ており、肩にピンク色のショールを下げているからだ。とても和モダンな感じの、アールヌーボを想像させる柄だった。
アメノは振り向いたオーリウスへ深いお辞儀をすると、着物を整えながら深いお礼をする。
「この度、この寮の寮生になるアメノ・ムラクモです。よろしくお願いしますね。未来の旦那様」
「あ、う、う。いや、その、あの」
「という訳でさ。アメノはさ、オーリに嫁ぐことを心に決めたらしいのよ。そんな訳でよろしく。オーリがもしおじさんだった場合、若くてぴちぴちでいいじゃない」
「?」
アメノはカンタレラの意味深な言葉に小首を大きく傾げた。でもそんな言葉が聞こえているのか聞こえていないのかオーリウスはただ唸るしかない。
そんな風に唸るオーリウスにアメノは再度抱きつくと、こう甘い言葉で囁くように言うのだった。
「では、よろしくお願いしますね。オーリウスさん」
「あ、ああ……」
「リボンは師匠に聞いたら、これからも頑張れるといいなという意味だったので付けました。私はオーリウスさんのお嫁さんになれるように頑張るためにリボンを付けました」
「あ……うん」
「お夕飯とか私つくりますから」
「あ、ありがとう」
アメノの甘い声を聞いて、オーリウスはなんでこうなったと深いため息をつくのだった。
こうして氷帝の魔女は氷解の魔女になるのだった。
そんなアメノを見てカンタレラは大きくため息をついた。
「つーか、あんた変わりすぎだから」
帝国料理養成学校の落第生 霜月華月 @Shimotsuki_kagetsu
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