失恋した俺に美少女生徒会長が心を奪いにきた
モンブラン博士
第1話
「好きです。付き合ってください!」
これは俺が言われた言葉ではない。
俺が好きだった子が言われた言葉である。
学校から下校する寸前、俺は偶然、好きな子が男から告白されているのを見た。
知らない男子だった。少なくともクラスメイトではない。
告白に俺の心臓が早鐘を打つ。
先を越された。だが、焦るのは早い。
彼女の返事を聞いてから――
「はいっ!」
この瞬間、俺の高校での恋は幕を閉じた。
中学でも好きなことを知らない男に奪われて。
高校でも告白する前から撃沈して。
大人は学生にはもっと大切なことがあるとかいう。
確かに勉強は大事だろうが、高校生にとって恋愛はとても大事なものなのだ。
実るかフラれるかで天と地の差があり、高校生活の充実度や勉学にも影響してくる。
そして俺は、恋の土俵に上がる前に敗北した。
これからどうやって生きていこうか。
俺はこの先もずっと、恋愛に敗北し続ける惨めな一生が待っているのだろうか……
「暗い顔してどうしたんだ」
突然かけられた声に俺はハッとした。
顔を上げると美少女がいた。
俺よりも長身で膝下まである銀髪を風になびかせている。
青い瞳は澄んでいて、一瞬、別世界の妖精かと思った。
龍崎蘭子(りゅうざきらんこ)先輩だ。
生徒会会長を務めているカリスマで、俺でさえ知っている有名人だ。
龍崎先輩は微笑を浮かべて言った。
「悩みがあるなら私が相談に乗ろう。これでも聞くぐらいならできる」
「すごく情けない話ですけど、いいですか?」
「構わない。近くに公園がある。そこで聞こう」
龍崎先輩に導かれるままに俺は人気の少ない公園に行き、ベンチに腰掛けた。
彼女は自動販売機の前に立って訊ねた。
「君は何が飲みたい?」
「えっ、俺はコーラですけど、奢られるだなんて、そんな……」
「気にするな。私も喉が渇いていたのでな」
彼女は素早くボタンを押して水とコーラのペットボトルを取り出すと俺に手渡した。
俺は受け取り喉を潤す。
龍崎先輩は隣に座って俺の話に耳を傾けてくれた。
「以上が俺の話です」
「失恋は辛いな……」
「はい。もう人生がどうでもよくなるぐらい」
すると彼女は目を見開き俺を見た。
「それは緊急事態だな。放ってはおけん」
何かを決意した表情で俺をじっと見つめたかと思うと、頬に柔らかいものが当たった。
もしかして俺、龍崎先輩にキスされてる?
「後輩君、これで少しは元気が出たのではないかな?」
「はい……」
全身から湯気を噴き出しそうだ。
顔が真っ赤になる。
「ハハハハハハハ……それは何よりだ。また何か悩みがあったら、いつでも私に相談したまえ。後輩君」
長い銀髪をなびかせ長身の先輩は去っていく。
その後ろ姿はどこまでも爽やかで、気づいたら俺は新しい恋に目覚めていた。
おしまい。
失恋した俺に美少女生徒会長が心を奪いにきた モンブラン博士 @maronn777
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