夏の空白、刻(とき)の無音

開けた窓、風の止まった部屋の奥。虚ろなままに、夏が佇む。


蝉の声、途絶えた昼。君の不在を刻む。


陽光は、褪せた写真の色となり。君の影さえ、朧に残らず。


触れる肌、熱も冷たさも知らぬまま。指先にただ、何もなき夏。


喉を通る、水に味なし。無音の刻に、君の声消ゆ。


あの頃の、香りはどこにも見つからず。花火の夜、君の笑顔消ゆ。


喜びも、悲しみも無く。君の名さえ、口にのぼらず。


時計の針、動く音すら聞こえずに。スマホの光、君の不在を刻む。


私さえ、ここに居るのか不確かで。君の記憶も、消え去る空。


全て失くし、残るは広き無の空間。君の光を、夏は落とす。

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