夏の瞬き、時が流砂(りゅうさ)

開く窓、光の粒子は降り注ぐ。この夏は、呼吸のよう。


夕立の、止まる一瞬、君の声。指先触れる、夏の静寂。


花火散る、一瞬に君の指が触れ。記憶だけが、熱いまま。


車窓の景色、粒子と化して流れる。追う指は、君の髪を撫で。


灼熱の、肌から時間(とき)は蒸発す。君といた日の、温みまだ消えぬ。


香りが過(よぎ)り、一瞬に風が止む。私だけが、夏に置き去り。


一口の、甘さ舌から失せてゆく。君を呼ぶ声、届かぬ夏へ。


想いだけ、波紋のよう広がる夏。掴む手は、空虚を掴む。


夢醒めて、君は陽炎、揺らめいて。この夏は、影と消えゆく。


全てが終え、暁に風が止む。君の掌(てのひら)、まだこの胸に。


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